相棒20 8話あらすじネタバレ
大学構内の地中から死後50年以上、時効化された事件の白骨死体が発見されました。
鑑識の益子(田中陸三)と捜査一課の伊丹(川原和久)、出雲麗音(篠原ゆき子)、芹沢(山中祟史)らは、右京と亘に後は任せて自分達の任務に戻るのでした。
そこで、右京(水谷豊)と亘(反町隆史)は早速、捜査を開始。
DNA鑑定の結果、1973年に学生運動をしていた岡田という過激派の幹部であることが判明しました。
敵対するセクトの幹部に殺された噂が囁かれています。
岡田の当時の関係者、吉澤を当たると、カリスマ的な部分があり、人の心を操る天才でもあったそうです。
一方で、岡田は女性に対してはとても非情で、無理やり関係を持った女性も一人や2人ではない一面もありました。
さらに、藤島という人形劇をしている男が岡田と共通点があるという情報を入手。
藤島は人形を操り、岡田は人間を操った男だと呟く吉澤。
その頃、その藤島(下條アトム)は、子供達の笑顔を支えに、老齢な年齢で人形劇をする学芸員の仕事をしていました。
藤島の戦友で仕事仲間の美鈴(白川和子)と二人三脚で、保育園や幼稚園などを廻っています。
その後、美鈴は朝まであるビル掃除の仕事へ出かけるのでした。
そんななか、梶原(ベンガル)という物流大手社長の遺体が発見。
部下で、室長の新島や運転手、健太によると、梶原はここのところ、情緒不安定で心配な面があったそうです。
さらに、ある人物に電話をかけて、「”あいつ”の亡霊が見えるような気がする」と奇妙なことを匂わせていたという証言もとれました。
一方、右京と亘は岡田の幼馴染だった藤島(下條アトム)を訪問しますが、多くを語ろうとしません。
内ゲバに狙われているという噂があったけれど真相は不明だと口をつぐみます。
捜査一課の伊丹(川原和久)、麗音(篠原ゆき子)、芹沢(山中祟史)らは藤島に任意同行を求めます。
事件当日、梶原の携帯に藤島を呼び出すメールが残されていたからでした。
「荒坂大橋の下で待っているから来て欲しい」
学生時代にこの人形劇団を立ち上げた仲間だと答える藤島。
さらに、荒坂大橋へ向かった時には既に、岡田は息絶えていたとのこと。
右京と亘はさらに、藤島の死にショックを受ける田中美鈴(白川和子)を訪問・・・。
卒業前に家業を継ぐ関係で人形劇を辞めた過去があった藤島。
この公演が行き詰まる度に支援をしてくれたと言葉を続けます。
年賀状を送る以外は連絡はとっていないと答えた美鈴。
ここで、美鈴は鏑木から梶原と藤島が連絡を取っていたことを知らなかったことを知りました。
美鈴は藤島と梶原、自分を含め、3人の関係は成人以降も良好で、藤島が梶原を殺すはずがないと右京と亘に訴えました。
また、右京は梶原、美鈴、藤原の間で、美鈴の一人息子とも交流していた写真立ての写真について追及。
美鈴は藤島の件で不安がよぎるなか、右京に愛息のことをしつこく追及されて苛立ちました。
右京たちが去った後、美鈴は学生時代を思い出しました。
梶原が実家の家業を継ぐため、人形劇団を辞める彼を温かく見送った美鈴と藤島。
やがて、警察署から任意取り調べを終えて出てきた藤島に安堵する美鈴。
後日。
右京は新島を訪ね、梶原が普段携帯電話でメールをすることを嫌がっていた話を聞き、ますます怪しみます。
つまり、梶原を名乗った誰かが、藤島にメールをして、藤島が現場の荒坂大橋の下に着いた時には、梶原が亡くなっていたということ。
次に喫茶店のマスター、野添を訪ねた特命係。
人形使いよりも写真の才能があると言われたことがあると思い出をこぼす野添。
そして、美鈴の一人息子は、中学時代に不良になり、それ以降は窃盗などを繰り返し、刑務所に服役していたことが判明。
美鈴は息子を最初は気にかけますが、結果的に絶縁。
さらに、更生した美鈴の息子、「健坊」こと、健太は、梶原と藤島に頭を下げて、更生の道を歩もうと努力をし、梶原の運転手になりました。
次に、梶原が生前、言っていた「亡霊」は、梶原の部下の一人であることが発覚。
梶原が「彼奴の亡霊」に怯えているのを知り、彼の携帯電話を使って藤島にメールを送った主でした。
その部下はなんと、田中美鈴の一人息子、健太だったのです。
健太は当初、改心して真面目に仕事をしていました。
突然、魁子を言い渡され、健太は混乱。
健太のことを完全に岡田だと錯覚、精神的に不安定になっていた梶原は、岡田に襲いかかり、彼の首を絞めました。
そこで、正当防衛のつもりでもみ合っているうちに、梶原を大きな石で殴打。
打ち所が悪く、梶原は死去。
全ては48年前に始まりました。
岡田を殺したのは、梶原。
「あいつの亡霊に見える」という健太が岡田の亡霊に見えてしまった情緒不安の原因。
岡田は健太の実父でした。
48年前、美鈴は学生時代に岡田から性被害に遭い、妊娠させられていたのです。
藤島と梶原が駆けつけた時には既に「行為」が終わっている状態で、ショックと抵抗しても力の差で敵わない悔しさに泣いている美鈴。
2人の男は、仲間だと信じてきた男への卑劣極まりない裏切りと、傷ついた仲間の姿に怒り心頭。
岡田と揉み合い、彼を棒で殴って殺した梶原。
藤島と美鈴は、彼の遺体を土の中に葬るのを手伝いました。
学生時代から、2人の男は、美鈴をずっと守ってきたのです。
ずっと葬り去りたかった心の傷を右京と亘に捜査によって、掘り起こされてしまった美鈴は、この件に触れてほしくなかった、ずっと胸に締まってきたことなのにと言い、藤島と共に悲しみに打ちひしがれました。
健太が梶原に「岡田の亡霊」だと誤解されて、格闘の末に殺してしまったことを黙っていた藤島。
健太自身は、正当防衛で梶原の頭を石で殴って殺した後、引っ込みがつかなくなり、梶原のふりをして、藤島にメールを送信。
右京は、「藤島は人形を操り、岡田は人間を操る」の言葉に隠された悲しい真相を痛感し、亘も「岡田は自分の息子、健太を操り、自身の復讐を遂げた」とつぶやくのでした。
相棒20 8話感想・みどころ
学生運動に勤しんだ岡田の死。
そして、岡田の同級生で、人形劇を立ち上げ、老齢になっても当時と変わらぬ大人の友情を築いてきた美鈴、梶原、藤島の3人。
物流企業の社長に就任した今でも、梶原は美鈴と藤島の公演を支援していた優しい関係。
しかし、この3人は学生時代に経験した「ある過去」への後悔や心の傷を抱えているという印象でした。
さらに、美鈴の息子に関しても何か触れてはいけない闇があるように感じます。
梶原が見た「岡田の亡霊」のようなものの正体が気になりました。
メールを携帯ですることを嫌う梶原を名乗った誰かが、岡田殺しの真相と、梶原を殺害したかもしれない匂わせと、老齢の3人のキーパーソンの行動や矛盾に面白みがありますね。
心優しき友を守り続ける老齢男性の人形遣いを演じた下條アトムさんの今回の役どころで良い意味での薄幸のオーラが滲み出ていると思いました。
また、学生時代に性被害に遭い、望まない妊娠をしても子供を育て上げ、四苦八苦しつつも、一人息子と距離を置いて人形劇と清掃の仕事に励む独居老人の女性を演じた白川さんの演技にも引き込まれました。
後半、明らかになった事実はとても悲惨でしたね。
48年前、岡田が学生時代の仲間の一人、美鈴に性加害を加えたことをきっかけに岡田を殺害した梶原と藤島。
「藤島は人間を操り、岡田は人間を操る」この言葉に隠された深い真相に心が痛みます。
岡田が人として最低な人間性を持っていたことが明らかになり、自分を強姦した男の息子である健太を殺すわけにいかなかった美鈴の複雑な心境もわかります。
また、梶原が岡田の亡霊が見えると不安定になり、美鈴の一人息子、健太を見てパニックを起こすのも、納得ですね。
健太はかつて自分たちが守ることができなかった大切な仲間を性被害に遭わせた「悪魔」なのです。
岡田によって、「操り人形」にされてしまった美鈴の後悔と計り知れない悲しみが伝わりました。
中学時代にグレて2回も刑務所へ行った過去があっても、健太は梶原と藤島を頼り、父親とは違い、正真正銘の更生の道を歩もうと真面目に働く姿に、こんな人が犯人とは悲しすぎます。
父親によく似た自分を誤解して、不安定になった上司の梶原と揉み合い、殺してしまう結果なんて誰もが予想しなかったでしょう。
健太は確かに岡田にどことなく似ているところがあったので、もしかしたら・・・と思っていたのですが予想通り。
岡田の亡霊による目に見えない復讐の犠牲者が、夢や希望をかつて抱いていた学生時代を経験し、たった一人の仲間の心に寄り添った姿に心打たれた8話でした。