相棒23 16話あらすじネタバレ
「まさか来て下さるとは」
「小手鞠さんからこんな素敵な場所に誘っていただけるとは。あれ、希美さん?!」
「小手鞠さん!」
「虻川希美さんです、こちら杉下右京さん」
茉梨は右京を希美に紹介します。
「ひょっとして虻川希美さんですか?」
「はい、父をご存じなんですか?」
「ええ。虻川徹さんといえば独特な色彩感覚が魅力の日本画の巨匠です」
2ヶ月前、小手鞠での小出茉梨(森口遥子)に誘われて、一面の菜の花畑を訪れた右京(水谷豊)。
そこで、虻川希美(松井愛莉)という女性と出会いました。
「虻川希美さんです。虻川徹さんの娘さんです」
「知ってます。虻川徹さんは絵は繊細ながら奔放な人柄で知られ、赤いサングラスがトレードマークですよね」
「希美さんも画家なんですよ?現役の美大生ながら絵が既に高く評価されていて。」
「ええ娘さんもご活躍でしたか、まさか小手鞠さんのお知り合いだったとは」
希美は日本画家の巨匠、虻川徹の娘で、自身も既に高い評価を受けている美大生です。
思わぬ数奇な偶然を喜ぶ、右京。
小手鞠は、芸者時代に徹夫妻とも交流があり、希美も顔見知りです。
「そうなんですよ。芸者時代にご夫婦でよくいらっしゃってくださってて。それ以来、お母様の洋子さんとは仲良くさせていただいております」
「そうでしたか」
「元気だった希美さん」
「はい」
「ところでこの場所は確か」
その菜の花畑は1年前、徹が心臓の病気で急死しした場所でもありました。
「変ですよね。父が死んだ場所で描くなんて」
「もう少しで1年になりますか。しかしその最後で芸術的だったとファンの間では話題になりましたね。一つ宜しいですか?この黒い菜の花は?」
「ご想像にお任せします。絵の意味なんて画家が話すものではありませんから。」
「これは失礼、絵の感性を楽しみにしています」
2か月後、画商の男性が刺殺される事件が発生します。
「先輩、ご苦労様です、こちらです」
伊丹を現場に通す、芹沢。
「被害者は星郁夫さん52歳、このギャラリーを経営する画商です。死亡時刻は15時から17時ごろ。19時過ぎにギャラリースタッフの西野さん。彼が打ち合わせから戻ったところ、彼が打ち合わせから戻ったところ、鋏で背中を刺され倒れている星さんを発見。
「展示の準備期間中で一般のお客さんはいなかったそうです」
「防犯カメラは?」
「あそこに」
「15時に防犯カメラが何者かによって止められていました」
「計画的な犯行の可能性があるってことか…。最近、星さんを恨んでいる人物はいませんでしたか?」
星の周辺についてギャラリースタッフの西野守に確認する伊丹。
「あ、関係がある人なら一人います」
星郁夫という男性が刺されて亡くなり、捜査一課の伊丹(川原和久)、芹沢(山中崇史)、麗音(篠原ゆき子)が捜査します。
「暇か?怖いな、若い子がおっさん殺しだってさ。こないだの青山のギャラリーでの画商殺し。被疑者は21歳の女の子だってよ。虻川徹、虻川徹の娘が犯人だってな?」
「虻川徹、覚えていて損はないと思いますよ」
角田課長(山西惇)からの情報に驚愕する、右京と亀山。
現場の状況などから希美が容疑者として浮上している状況でした。
その後、鑑識の益子(田中陸三)に証拠品の状況を尋ねました。
「もういいだろ忙しいんだ」
「あと一つだけ、現場には空の額縁が落ちていたということですが中の絵は盗まれたのでしょうか?」
「いやそれがギャラリーからなくなっていた絵はないらしい」
「なんで虻川希美が被疑者に?」
「これだよ」
「希美さんのイヤリングですね」
すぐ言い当てる右京。
「さすが記憶力」亀山は右京の記憶力を感心します。
「母親からも証言がとれてる。それにイヤリングに付着した血液、それが被疑者とは別の血液で」
「希美さんの血液だった」
「母親のDNAと照合した結果、99%親子だと一致した」
現場に希美がつけていたイヤリングが画廊にありました。
希美の母、洋子に聞き込む、右京と亀山と捜査一課。
「娘は犯人ではありません!」
「あの日、希美さんはギャラリーに絵を届けに来る予定だったみたいですね?」
麗音が洋子を刺激しないよう、慎重に聞きます。
「知りません。娘は家を出ていて、しばらく話せてません」
「連絡がとれないと」
「メッセージを送っても出ません」
「それはいつ頃のことでしょう?」と右京。
「半年前です。突然、荷物をまとめて、千葉の房総にあるホテルで生活しているようでした。」
「千葉の房総に」
「菜の花畑があるところですね?」
先日訪れた花畑と同じ場所のホテルに希美が滞在していたとの情報を得た特命係。
「夫もよく何カ月もそこに泊まっていました。日本画は時間をかけて風景と対峙していくものですから」
「そのホテルに希美さんは?」
「ああもう事件のあった日、朝、チェックアウトしてた」
伊丹が洋子の代わりに鬱陶しそうにして答えました。
「ちょっとよろしいですか?」
「はい」
「こちら希美さんが以前に書かれたものではないですか。素晴らしいデッサンです。一本一本の線が写実的ですね。」
「画壇の先生達にもそのように認められていました」
「しかし最近は画風が変わったんじゃありませんかね。今までと違う写実的ではない画風を描き始めた」
「そのとおりです。あの子の画風が犯罪が関係あるんですか?」
「細かいことが気になる性分でして」
「麗音ちゃん、麗音ちゃん、捜一があそこまで強く攻めるってことはイヤリング以外にもなんかあったりするんじゃないの?」
亀山は麗音にこっそり情報を聞きます。
「実は、1年前に亡くなった虻川徹先生の死に星さんが関わっていたっていう噂があるんです。」
「しかし、虻川さんの死因は、以前から患っていた心臓病だったはずですが?」
聞き返す右京。
「ただ亡くなった時、発作の時に飲む薬を持っていたのになぜか飲まなかったみたいなんです。」
「妙ですね」
「その日、虻川先生と一緒に虻川先生も花畑にいたみたいで」
「出雲ーおしゃべり禁止」
「どうもありがとう」
「いえ」
芹沢が麗音をやんわりと注意し、麗音は仕事に戻るのでした。
警察は画商が徹の死に関わっていて、それを知った希美が殺意を抱いたのではないかと疑っていました。
「お父さんは星さんのせいで死んだ。希美さんもそう思っていたら殺す動機ありませんよね。どうします、探しますか?」
「ええ。気になっていた事があります。額縁です。額縁に絵が入っていたのではないかと。事件の前にギャラリーにいたのは星さんだけです。もし星さんが絵を受け取ったのだとしたら、絵がなくなっていても誰も気付きませんよ」
「じゃあもしそんな絵があってその絵を誰かが持ち去っていたのだとしたら?」
「その絵は事件の大きなカギになるということですね」
その後、西野守に話を聞きます。
「希美さんに変化があったそうですね」
「希美さんが疑われているのでしょう。僕の証言のせいですね。あの子は悩んでいたと思います。星さんのせいですよ。虻川さんが生きている頃は星さんも希美さんに優しかったんです。日本が最後の巨匠の虻川徹の娘ですので。冷たくなって。」
「しつこいな忙しいんだよ!」
「希美さんの扱いが軽くなった?」
「事件の日、希美さんが夜までにこの展示会用の絵を持ってくるっとお伝えしたんですけど」
「菜の花プロジェクト?」
西野は希美の事件当時の様子と、菜の花プロジェクトについて特命係に伝えます。
「星さんと虻川さんが代表を務めていた次世代の画家を育てるプロジェクトです。」
「虻川さん菜の花畑を気に入っていたんですね」
「小さな幸せという言葉をとても気に入っていらっしゃいました。あれだけの立場を築いても無名だった頃の絵を描く幸せを忘れたくないと」
「しかも若手画家たちの育成までされていた」
「ご病気もあって次世代の若手画家たちに何か残したいという思いが強く会ったんだと思います」
「菜の花プロジェクトのグループ展がもうすぐ開催されるはずだった」
「はいまさかこんな形で中止になるとは思いませんでしたけど?
「グループ展に持ってくる絵を希美さんがここに持ってくるはずだったんですね?」
「絵は見当たらないしここに来なかったのかも」
「搬入される絵は希美さん一人だけでしょうか?」
「いやもう一人いますね」
「どなたでしょう」
捜査に乗り出した右京と亀山薫(寺脇康文)は行方が分からなくなっている希美を探す為、被害者の画商が最近、推していた倉田ひかり(山谷花純)という画家から話を聞きます。
「倉田ひかりさんですね?」
「星さんの事件のこと知ってますか?」
「絵をギャラリーに搬入する予定だったんですね?」
「はい」
「絵を星さんに渡したんですか?」
「それは何時頃のことかな?」
「バイトが終わって15時くらいだったと思います。」
「その後はどうされたのでしょう?」
「すぐ帰りました。その後事件のことを知りました。」
「ところであなたはいつも15号の額縁を使っていますね。」
「大きいサイズで描くのが好きで、一つの作品に時間をかけて向き合うのが好きです」
「星さんが殺された事件現場に壊れた額縁がありました。その額縁の大きさが15号です。ちなみに同じ日に搬入される予定だった虻川希美さんも15号です」
「壊れた額縁に入っていた絵はあなたのものではありませんか?」
「はい」
「あなたが時間をかけて完成した絵が誰かによって持ち去られた、取り戻そうとは思わなかったんですか」
「ええ警察に行きます」
「星さんと会った時、不審な人物を見たとか」
「考えたんですけど見たことなくて」
「いいえ」
「星さんは命の恩人です。コンクールに出した絵を見て」
星から菜の花プロジェクトに誘われていた、ひかり。
「よほど印象的だったのでしょうね。ギャラリーの西田さんもあなたの絵はとても魅力的だと褒めてらっしゃいましたよ。」
「虻川先生も褒めてもらいました。色遣いを褒めてもらって、経済的にも助かりました。私には絵しかないんでそうするしか…」
「画家の絵を開花させる、まさに菜の花プロジェクトで羽ばたかれた」
「ああちなみに虻川希美さんと接点はなかった?」
「ないですよ。美大も違うし。菜の花プロジェクトだけど、虻川徹の娘ですよ?私とは住む世界が違う」
ひかりと希美は同級生で、境遇の違いから接点はなかったとのこと。
「額縁に入っていたひかりさんの絵、それを盗んだ犯人が星さんも殺した」
「さぁどうでしょうね」
「血とイヤリングが落ちていたってことは」
「ワープだよワープ、虻川の娘、アリバイがある」
「麗音ちゃんまで!」
「事件のあった16時頃、通っている八王子の美大から駅に向かう希美さんが防犯カメラに映ってたんです。ここから美大からギャラリーまで1時間かかります」
「16時頃に美大ね?」確認する亀山。
「つまり16時頃に殺すのはワープでもしない限り不可能。犯人は別にいるということになる。」
「でも現場には、希美さんの血とイヤリングが落ちていたんですよね」
「興味深いですね。イヤリングは犯行とは別のタイミングで落ちたかもしれませんよ」
「希美さんは誰かを庇った。わざと自分の血とイヤリングを落とし捜査を攪乱するために」
「わたしもその線で考えています。希美さんがそこまで庇うなら母親の洋子さんじゃないか」
「洋子さんは虻川さんの遺産を半分しかもらえず、残りは菜の花プロジェクトに回されていたそうですよ。ヨウコさんそのことで虻川さんと揉めていたそうです」
そんななか、徹の遺産を巡り、希美の母、ようこは虻川と揉めていました。
「あなたの都合のいいように書かせた遺言なんて私は認めませんから」
「洋子さん達ご家族は虻川先生の遺産を半分しかもらえなかったそうで、残りの半分は菜の花プロジェクトにまるごと寄付されたと」
「虻川さん亡き後、菜の花プロジェクトは星さんのもの。つまり虻川さんの遺産の半分を自室、星さんが手にしたことになる。」
「洋子さんそれを追求していたらしいんです。星さんが自分に都合のいい遺言を虻川先生に書かせてたんじゃないかって」
「ああ動機はばっちりじゃないですか」
捜査一課の伊丹達と共に、右京と亀山は、希美の母、洋子訪ねました。
「虻川さんの遺言の件で星さんを恨んでいたそうですね」
「虻川さんを殺したのも星さんだとお思いですか?遺産を早く手にする為に」
芹沢の嫌味ったらしい聞き方に、洋子は反論します。
「そんな…。夫はあの日、かばんを変えていただけですから。薬を見つけられずに亡くなっただけです。殺されたなんて。」
「けど鞄を変えただけで命に関わる薬を飲めない事なんてありますかね?」
「あなたも気付いてたんじゃないですか?星さんに夫もお金も奪われたって。」
麗音と伊丹がさらに畳みかけます。
「お金お金ってそういうことは言われ慣れています。夫と結婚した時も遺産狙いの結婚だとか、けど、お金の為に結婚したりましてや人を殺したり、そんなことは致しません!」
「倉田ひかりさんをご存じですか?」
「え?」
「希美さんと同じ菜の花プロジェクトの若手画家です」
「娘と一時期仲良くしていた子と聞いたことがあります。1年前くらいですかね、喧嘩でもしたのかすぐに話に出てこなくなりましたけど。」
「1年前ですか」
「念のため、事件のあった15時から17時何をしていましたか?」
「あの日は喫茶店にいました」
「誰か照明できる人はいますか?」
「友人と一緒でした」
「小出茉梨さんという方です」
予想外に茉梨の名前が出て驚く特命係と捜査一課。
「私も妻も見ていますので」
「アリバイ成立」
アリバイは案の定、証明され、茉梨とようこは一緒にいて、喫茶店の加賀夫妻も承認。
「こちら杉下さんと亀山さん、うちの店の常連なんです。お2人にはよくきていただいて」
「彼女、誤解されやすいんですかね?虻川先生を愛してらして、彼の才能が世間から忘れられないように守らなくちゃっていつも気を張っているんですよ」
「ああ」
右京は喫茶店で虻川の絵を知りました。
「こちら虻川徹さんの絵でしょうか?」
「虻川希美さんです。」
「いや、彼女の完成された絵を見るのは初めてですが、タッチが繊細ですね、お父様を受け継いでいらっしゃるのでしょうか」
「虻川先生の絵を店に飾るのが夢だっておっしゃってましたよね。美術展があれば世界中飛び回って」
「なかなかそうもいきませんよ」
茉梨は加賀夫妻が、虻川の絵を店に飾りたがっていたことを口にしました。
「そしたらギャラリーの星さんが娘の希美さんの絵を薦めてくださってね。それからたまに買わせていただくんです」
「それがきっかけで洋子さんは店に来るようになって」
「店中、甘い香りが充満してますね」
「こちらです、名物ホットケーキ。さゆりさんお2人にも是非」
加賀夫妻が希美と虻川徹のファンだと知った、右京と亀山。
「亀山君、ひかりさんの絵にあったのと同じモチーフじゃありませんか?」
「ああ確かに」
「なんででしょう」
「だってひかりさん、希美さんとは接点がなかったって言ってましたよね。」
「洋子さんそう言ってましたね」
「ああ言ってましたね」
その後、ひかりを再び、捜査。
ひかりは帽子を被っていました。
「話ってなんですか?」
「調べてみたところあなたと希美さんは一年前から同じモチーフで絵を描いたりしていましたね。お2人は一緒に写生に行っていたのではありませんか?」
「あなたと希美さんは仲良かったんじゃない。もしかして希美さんは君を庇うために隠れてるんなんてことは?」
「庇うって笑死が星さんを殺したってことですか?そんなことする理由がありません!」
「西野さんからお聞きしました。あなたは星さんに大変気に入られていたと、あなたの絵を個人的に飼う事もあったそうですね。今まで画商として絵を買うことはあっても自分で買うことはなかった。それほどあなたの絵にほれ込んでいた。1年くらい前から。いえ、星さんの変わり身が気になりました。虻川家の希美さんには急に手のひらを返した、何故でしょう?」
「虻川さんの死の直前に何かがあった。それをきっかけに君と希美さんは何かを周りに隠し始め…」
「虻川さんの死とか星さんがどうとか、そんなの私が知るわけないです!いい加減にしてください」
その夜の小手鞠で食事をする、特命係。
美和子がSNSに小手鞠の料理を投稿していました。
「SNSなんかに料理載せて楽しいの?」
「こうやって発信するのがいいの」
「希美さんのSNSも」
「亀山くんあそこへ行ってみましょう」
再び、菜の花畑へ向かう特命係は飯沢という警察官から、虻川が亡くなった当時の様子を聞きました。
「通報された時、こちらにいらしたんですね。」
「はい今でも覚えてます、有名人ですから」
「どの辺りでしたか?」
「こちらです」
「到着された時既に亡くなっていたんですね」
「はい、その後の司法解剖で死因は心臓発作で病死ってことになりました。」
「あ、でも一緒にいた星さんに薬を隠されたからってお噂もあったんですね。虻川さんが星さんに薬を隠されたってあったんですよ」
「それはあり得ないです。虻川さんが亡くなってから、私達が現場に到着するまで通行人が見ていたんです。その中で、虻川さんの鞄に就かづいて薬を戻すようなことはできなかったはずです。」
「ああじゃあ星さんのせいじゃなかったと。やぱり鞄を変えて薬を見つけられなかったと」
「虻川さんはこの場所でこちらを向いてデッサンしていた?」
「はい、そう記録しています。」
「時間も今くらい」
「まさにそうです」
ふと、眩しさに目を細めた右京は真相に気付きます。
「やはりそうでしたか」
「え?」
「全て繋がりました」
そして、右京と亀山は三度目にひかりを尋ねます。
「まだなにか?」
「現場に落ちるはずのない地とイヤリングが何故落ちていたのか」
「ところでひかりさん、あなたと希美さんは同い年ですね。年齢以外にも共通点が一つあります。一つは誕生日ひかりさんも希美さんも10月18日生まれです。そしてもう一つひかりさんあなたは多摩のお生まれですね?だからご両親のお墓を地元に作ろうとしていた。希美さんもお母様の実家のある多摩の小さな助産院で生まれたそうです。その助産院はなくなってしまいましたが、当時、助産院で働いていた方から話を伺いました。その日は大きな台風があって建物が浸水。全員が一斉に避難しなければならなかったと。そしてその日、希美さんの他にもう一人女の子が生まれたことも覚えていました。取違えが起きてもおかしくないと聞いたところその状況は否定できない状況だったそうです。あなたと希美さんはそこで取生まれた時に入れ替わったのではないですか?つまり虻川徹さんと洋子さんの実の娘はひかりさん、あなただった。そして現場に落ちていた血もあなたのもの。そうですね?」
「おそらく君たちはお揃いのイヤリングをしていた。それほど仲がいいのでしょう」
「希美さん、もう出て来てはいかがですか?」
そこへ、希美が現れました。
「一番安全な場所に隠れていましたね」
「刑事さんだったんですね」
「ええお久しぶりです」
希美とひかりはお互いの身を隠していました。
「ごめん」
「ううん」
「いつから取り違えに気付いていたんですか?」
「最後のヒントとなったのは1年前のお父様の死の真相でした」
「お母さんから聞いたんだけど、お父さん字を読むのを面倒に思っていたそうだね。メールは使わず全て電話だったと」
「父はそういう性格でしたから」
「性格ではなく、体質だったとしたら?」
「アーレンシンドロームという症状があります。光の感受性が高く文字が読みにくくなる。お父様のそのような症状をお持ちだったのではないでしょうか?しかしアーレンシンドロームは、カラーレンズをつけることでその症状が和らぐこともあるそうです。お父様のトレードマークの赤いサングラスはその為でしょう」
「でも絵を描くときだけは外していた。あの日デッサンをしていた、虻川さんに正面から強い日差しが降り注いだ。強度のアーレンシンドロームを持っていた、虻川さんはめまいと頭痛に襲われ、そして同時に、心臓病の発作にも襲われてしまった。運悪く、心臓の薬も鞄から見つけられず、ついに亡くなった。これが虻川徹の死の真相なんだ」
「ひかりさん、あなたと最初にお会いした時、違和感がありました。警察手帳に目を細めていらっしゃいましたね。カーテンが閉じられた薄暗い部屋、外でいつも被っている帽子、あなたも光に敏感で文字を追うのが苦手だったのでしょう。アーレンシンドロームも遺伝的なな要因があることも結論付けている論文もありますからね」
ひかりも、アーレンシンドロームを受け継いでいると指摘する、右京。
「いつかはこうなると思ってました。ひかりちゃんとは菜の花プロジェクトで出会い、なんとなく話すようになって、誕生日も生まれた場所もおんなじだと知りました。それから、父とひかりちゃんが似ていることにも気付いて。私達は自分の運命を悟りました」
「希美案の画風が変わったのもその頃ですね」
「怖かったんです。いつか虻川希美でないと母に知られてしまうんじゃないかって。もし、虻川徹の娘じゃなくても一人の作家として認めてもらえるような作家性のある絵を描かなきゃと思って」
「そしてひかりさんも希美さんと一緒に取り違えのことを隠そうとした?」
「私にとっての両親は育ててくれた2人だけなので。今更、虻川先生の娘だって言われても受け入れられなくて」
「そしてお2人は秘密を共有する仲になった。しかし事件は起こった現場に落ちていたイヤリングはひかりさんのものです。つまりあの日、ギャラリーに絵を届けていた、ひかりさんと星さんの間にトラブルがあったんですね」
「私達の秘密に気づいて。経歴を見て気付いて、探偵を雇って調べたって言われて。」
「それを星さんに世間に公表するよう、持ち掛けられた?」
あの日の星が殺された日、希美が虻川の実子ではなく、取り違えで本当の娘は、倉田ひかりでした。
ひかりは星にそのことを指摘され、口論になりました。
出自が世間に明らかになるのも時間の問題だと考えた、ひかりは希美を匿い、庇っていただけでした。
「さすが虻川の娘が描く菜の花は違う。」
「なんで?」
「君のお父さんの事、私から世間に公表しようと思ってる」
「秘密にしておいてください」
「いいじゃないか」
「そうすれば今まで買ったひかりさんの絵の価値は高騰し、星さんは大きな利益を得る。その会話が記録に残らないよう、防犯カメラは星さん自ら切っていたのでしょう」
「許せなかったんです、星さんが絵を買っていたのは私の絵が好きだからじゃなくて、虻川徹の娘だからです。そんな人に絵を渡したくなくて。」
星と揉め、絵が入った額縁を壊した、ひかり。
「なにやってるんだ、ちょっと離しなさい」
「やめて、やめてください!」
「いや落ち着けって」
星に後ろから押さえつけられて、抵抗したひかりは転倒した際に、手首を怪我しました。
「離して!」
「やめて!」
「私は殺してません。あの日、絵を持って逃げました」
「私、あの日、自分の美大に寄った後、ひかりちゃんに絵を見せる為にここにきて。星さんが世間にばらしたらどうしようってそしたら母から連絡が来て」
≪星さんが殺された、希美の血じゃないよね?≫
「2人の取り違えが分からないために隠れることにしたんですね」
「はい、済みませんでした」
「星さんのことで何か気付いたことはありますか?どんな些細なことでも結構ですよ」
「わかりません…そういえばギャラリーで甘い匂いがしたような。」
「たとえばバニラのような」
右京と亀山は、加賀夫妻の喫茶店へ向かいました。
「芳醇なバニラの香りがいいですね。バニラエッセンスを使うのが特色なんですね。」
「ええ」
加賀は右京にホットケーキを褒められ、加賀さゆりは笑顔を浮かべます。
「星さんが亡くなられた現場でもバニラのような甘い香りがするという証言がありました。加賀さんギャラリーにいませんでしたか」
「杉下さん、私お店にいました。」
「そうですよ刑事さん何を言ってるんですか」
「洋子さんと小手鞠さんも御存じのはずです」
「ああでもね2人とも加賀さんは見たそうなんですが、さゆりさんあなたの姿は見てないって言ってるんですよね」
「私を疑っているんですか?そもそも、私は星さんを殺す動機はありません!」
「店に飾っている虻川希美さんの絵が二点。絵画美術品、高額買取。あなた方は希美さんの作品を売ろうとなさっているのではありませんか?」
「これはお客さんの忘れ物です」妻を庇う、加賀。
「明日買取の予約が入っていると聞きました。虻川希美さんの絵が二点。」
「虻川の実の娘でないということが世間に知られ、値が下がる前に売ろうとした」
「あなた方はその日その事実を知ってしまった」
「あなたが星さんを殺したんですね?さゆりさん」
加賀さゆりを追求する、右京。
「私は15時半頃ギャラリーに行きました。星さんと希美さんの新しい絵を買う予定でした。そこで聞いてしまったんです。星さんとひかりさんが話しているのを。自分が交わされていたのは虻川の娘の絵じゃなかった!星さんは本物の娘の絵を買っていたんです!」
「ええ、虻川徹を敬愛するあなたにとって虻川徹への冒涜だったでしょうね」
「あの後、星さんを問い詰めたんです」
「虻川徹の絵を変えなくても、希美さんの絵を買えば虻川の遺伝子に触れることができるってそう言うから!」
「お帰り下さい、私も疲れているので」
そして、星を衝動的に、殺した加賀さゆり。
「加賀さんはその直後、さゆりさんから電話で事件のことを聞いた。だからアリバイを作るために見せに来た洋子さんの前でさゆりさんがいるふりをした。一人芝居をし16時頃、さゆりさんが事件があった時刻に厨房にいたように見せかけた」
「星さんが悪いんです!私達の虻川徹への思いを裏切ったから!」
「愚かですねー。生まれや遺伝子に捉われ、希美さんが描く絵の美しさをあなたは見ていなかった、残念でなりません」
泣き崩れる、さゆり。
希美とひかりを訪ねた、右京と亀山。
「菜の花畑に咲く黒い一輪の花。もしや取り違えによって虻川家に生まれたあなた自身のことを描いたのではありませんか?」
「はい、でも悪い意味ではないんです。どこにいても私は私だって思えるように描きました」
「ええ伝わってますよ」
「あとひかりちゃんと話して、自分のこと親に伝えようと思います」
「世間にどう言われても良いです、自分の絵を見てくれるから」
「希美!あなたは私とずっと虻川徹の娘」
「お母さん…」
希美と母の洋子はようやく事件を機に仲直りしました。
「希美の事ありがとう、これからのことはまた話しましょう」
「はい」
ひかりも希美の母、ようこに理解してもらい、一件落着。
「希美さん逞しいですね。どこにいても私は私って」
「昔の私に聞かせてあげたい。この店を始めた時、私も自分を見失いそうになっていましたから。私も私ここにいていいのかしらと思う事がありました」
「花が素敵なら咲く場所など問題ないのでしょうね。ついでにもう一つだけ、2カ月前2人で花畑へ行った件ですがあれは洋子さんの為ですね。希美さんのことを心配する洋子さんを見て、あなたは代わりに様子を見に行くことにした。一人で行くと差し金だと思われるから誰か一緒に行く人が欲しかった。そこで僕をあの花畑に誘った」
「証拠はあるんですか?」
「顔を見ずにあなたは希美さんに近づいていった。妙だと思いましたよ」
「杉下右京には隠し事はできませんね。半分正解です」
「おや半分とは。半分とはまた小手鞠さんも中途半端なこと言いますねぇ。なぜ半分なのでしょう?」
「知りません」と亀山。
「なんなんですかあなた方」
右京は茉梨と亀山の態度にいじけるのでした。
相棒23 16話感想・みどころ
画家の巨匠の才能を色濃く受け継ぐ一人娘を巡る事件。
真相は乳児取り違えが起こり、真相を知った画家のファンが、関係者の画廊をファン心理が暴走して殺害したというものでした。
右京が言うようになんと愚かな事件なのでしょう。
平凡に喫茶店を経営していた女性が、愛する画家の娘の作品だと関係者に嘯かれて、その抑えきれない感情をぶつけて事件が起きたのが真相だったとは。
事件の被疑者として疑われていた希美が無罪で良かったです。
さらに、希美の親友のひかりも、彼女自身が虻川の娘でありながら、表向き「虻川の娘」ということになっている、希美を庇い続けていた優しさも救いでした。
若い女の子特有の友情をきっかけに、秘密を共有していた2人が守りたかったのは、絵を描き続けることで自分の存在意義を認識し、前進することでした。
右京の名推理で、生きることにさらに希望を見出した若き画家の飛躍が楽しみな16話でした。