人事の人見8話あらすじネタバレ
7年前、人見(松田元太)の上司である、平田(鈴木保奈美)は、「日の出鉛筆」初の女性部長でした。
社長の小笠原(小野武彦)や躍進に何も言えず、部下に対しても強く、出られず、部長である意義を見失いつつありました。
そんな折、常務の里井(小日向文世)は人事部が草案をまとめた、「日の出鉛筆子育て支援策」に関して、社長以外の取締役の賛同を取りつけたことを報告します。
「平田さん、先日、人事部でまとめていただいた子育て支援対策についてですが、子育て支援策ですが、取締役の方々のに賛同を取り付けました。残るは社長ですが、今の時世や、社員のニーズを考えたら、さすがの社長も理解を示すはずです。準備を進めて下さい」
「人事部に伝えておきます」
「我が社にとっては大きな変化です。しいてはこういった取り組みが行われているところを世間にきちんとアピールしていきたいところですね」
「でしたらリーブスジャパンに取材していただくのはいかがでしょうか」
「リーブスジャパン、確かあの雑誌は以前、我が社に対して、かなり批判的な記事を載せていましたが…」
「男性中心的な硬直した日本企業ですよね?確かに以前は取り上げてられましたけど」
「我が社の変化をアピールする媒体として最適ということですね」
「はい!知り合いにリーブスジャパンのライターさんがいて、篠原裕美子さんなんですけど」
「篠原さん?かつてうちで働いていた」
平田はこの取り組みをアピールする為、かつての先輩、篠原裕美子(久世星佳)がライターをしている有力雑誌に取材してもらおうと提案します。
そこで、後日、平田は篠原とカフェで対面しました。
「へぇーあの平田が人事部長」
「形だけですよ」
「頑張ったのね」
「いやいや私は何もしてないですから」
「凄いよ。あの会社で私は耐えるのとかできなかったたちだから」
20年前、平田はマミートラックで雑な仕事しか任されず、日の出鉛筆を去った、篠原のことを思い出しました。
「篠原さん辞めるんですか?」
「私の仕事はここにはないみたいだから。」
「そんなことありません!篠原さんみたいに出来る方が」
「それに今ちょっと交渉したところで、どうせこの会社は変わらないから」
そしてやめていった篠原。
「篠原さんはリーブスジャパンで記事書いているんですよね?」
「今じゃしがないライターよこの年で。まだ現場行ってインタビューして、原稿書いているんだから」
「実は是非、篠原さんにお願いしたい事がありまして」
「社内託児所、リモートワーク、カバー手当!あの会社がこんな取り組みをね」
「私は篠原さんにこの会社が変わっていたんだってことを取材していただければと思いまして。勿論、抵抗がなければの話ですが」
「全然、是非、取材させて」
その頃、人事部では、子育て支援策について話し合いが進められていました。
「社内託児所を設置する動きがありまして」と、真野(前田敦子)。
「託児所といえばなんだ?」と須永。
「まず簡易ベッドとか?」
富樫と須永は託児所に必要なものを話し合います。
「うちの社内でリモートしてる部署もあるじゃないすか」
「まぁ良いと思うけど」
「もう少し子供が可愛いって思うもの…」
一方、調達部の川戸舞(大塚千弘)は、「マミートラック」について、平田に相談するため、人事部を訪れました。
「調達部の川戸と申します」
「平田部長、こちらの川戸さんがお話が」
人見は川戸を別室に案内し、平田と共に、川戸の対応に応じることに。
「マミートラック」とは女性社員が産休や育休明けに、仕事内容の変更を命じられ、キャリア形成に支障が生じる事です。
「マミートラックって言っていいのかわからないんですけど」
「マミートラック?子育てしながらトラック運転する人?」と人見。
「違う。マミートラックっていうのは子育てしていて、活躍しづらい環境に置かれたり、責任のない仕事しかさせてもらえない状況を言うんだけど」
「なんすかそれめっちゃ意地悪じゃないすか」
「まぁだから問題なんだけど、具体的にはどのような問題なんでしょう」
「私は調達部で、海外からの仕入れを担当しているんですけど、育児休暇から戻って来て2年くらいですかねー担当の取引先も持たせてもらえなくて、簡単な入力作業と書類整理しかさせてもらってない状態でして」
「そうですか」
「産休に入る前は、チームリーダーも務めさせてもらっていたので、ちょっとあまりの差に、これはと思ってしまうといいますか」
「分かりました!部長に言いに行きましょう」
「関谷部長にも言いました」
「あ、言ったんすか」
「ですが」
「聞いてくれなかったんすね。じゃあ何に悩んでいるんすか」
川戸の場合は、部長の関谷に訴え、改善してもらったのですが、どうしても周囲にフォローしてもらう機会が増えてしまい、悩んでいました。
特に柱谷は、川戸の幼児の一人娘、凛が発熱したと聞くと、仕事のフォローを露骨に嫌そうな態度で示してきました。
「あの柱谷さん済みません。子供が熱を出してしまって保育園に迎えに行かなきゃいかなくて。度々済みません」
「いいから!残りやっとくから!」
川戸はシングルマザーで娘と2人暮らしです。
「私は娘と2人暮らしなのでこういったことは避けられなくて、何度も迷惑をかけてしまっていて」
「それは迷惑というわけでは…」
「そうすよ」
川戸の話を聞いてフォローする、平田と人見。
「職場だけじゃないんです…」
熱を出した娘に明日、家にいるかを尋ねられ、「いる」と答えることはできない葛藤も打ち明けました。
「もっと働きたいなんて私だけの我儘なのかなって。」
「いや我儘じゃないすよ。働く川戸さんも川戸さんじゃないすか」
「有難う御座います。ごめんなさい、ただの愚痴みたいで申し訳ないんですけどどうすればいいのかなって」
「川戸さん謝る事じゃありません。育休明けの社員や子育てしながら働く社員を支援する制度のない会社の現状が間違ってるんです。でも安心してください、これからは変わりますから。」
「変わる?」
「子育て支援の取り組みが始まります。社内託児施設を設置したり、お子さんの為の休みの制度や各種手当も設けます。」
「そうなんですか!」
「だから川戸さんもこれからはOKですよ」
平田はそんな川戸に、社内託児サービスの設置など、子育て支援が始まる事を告げました。
ところが、社長の小笠原は、子育て支援が自分の知らないところで進んでいたことに腹を立てて、これを却下します。
「なんなんだこれは。俺は聞いてないよ!まったく私に隠れて役員連中に裏から手を回して、一体どういうつもりだ。里井、呼べ」
しかし、里井常務は今日から海外出張でした。
「私はな、何も子育てするなと言ってるわけじゃないんだ。特定の社員ばかり優遇したら不平等になる。社員の我が乱れる。そうだろ?私が何か間違ったこと言ってるか?」
「仰る通りです」
明日、雑誌の取材日、それに合わせて社内託児サービスもプレオープンする予定でした。
しかし、平田は、小笠原に全てを却下され、白紙に戻そうとします。
「白紙に戻します」
「ありえないですよ」と真野。
「まぁそうなんだけど…」
「だって決まったんじゃないんですか?」
「話は通ったけど社長が俺は聞いてないよって…」
「だからって今更却下するんですか」
「明日、取材するんじゃないんでしたっけ?確か経済史のリーブス」と堀。
「そうなのよ、断らなきゃいけないのよ」
リーブスの篠原の取材を急遽、断らなければいけない状況に頭を悩ませる平田。
「でもこれで社長が全部ひっくり返したからキャンセルみたいなことになったら…」
「イメージ最悪ですね」
まず、ウジンが日の出鉛筆の評判が一気に悪くなることを予想します。
彼の後に続けて、森谷、富樫、須永など人事部面々は、会社の評判が落ち、新人を採用しづらいことになりそうだと悩みを口々にしました。
「硬直した日本企業」
「独裁」
「横暴」
「就職したくない企業ランキング」
「わー勘弁してよー」
「明日から川戸さんの娘さん預かりますよね」
人見と平田は、川戸に彼女の娘、凛を日の出鉛筆託児サービスのプレオープンで預かることを宣言してしまっていたのです。
「うちの娘の保育園、インフルエンザ蔓延で明日から登園自粛になったので」
「明日から託児サービス使えるんですか?」
「はい、取材に合わせてプレオープンするので」
しかし、その約束まで中止にする羽目になります。
「じゃあ断るんすか」
「申し訳ないけど社長が中止って言ったから仕方ないでしょー」
ここで、真野が人見のようにアイディアを思いつきました。
「あ!めっちゃ良いこと思いつきました!取材、受けましょ?」
「何を取材してもらうのよ」
「託児所とか手当と支援全般です」
「いやいや社長が却下したんだぞ。」
「でも社長が一人反対しているだけですよね?」
「まぁね」
「だったらそういう取り組みをやっている取材してもらってそれが世に出ちゃえば、実際にやらざるを得なくないですか?」
「既成事実にするってこと?!」と富樫。
「そういうこと!」
「部長もおかしいって思いますよね?」
「その規制なんとかなら子育て関係の奴は…OKになるんすか」
「なると思う」
「良いじゃないですか。川戸さん喜ぶ」
「ちょっと待ってみんなこれ、社長に逆らうことよ?本当はやってないことを嘘を実現させるのに。ここは里井常務にご相談」
「海外ですよ」
「部長、リーブスに言うんですか?子育て支援は中止になりましたって」
「真野が人見化してきたな」と須永。
「私はそんなあてずっぽうな提案してないですよ!」
平田が頭を抱えるなか、子育て支援策は、必須と考える真野は、社長にばれないように取材と託児サービスを両方行い、既成事実を作ってもらおうと作戦を決行します。
「取材、受けましょう」
やがて、篠原が日の出鉛筆を訪れます。
平田は篠原を案内することにしました。
「随分綺麗になったわねー」
「10年くらい前に結構変わりましたね」
「建物だけじゃなくて雰囲気とか変わったのが一番嬉しいかな」
「そう言っていただけると」
その頃、堀と桜井、富樫は人見だけでは不安なので、真野が保育担当と聞いてほっとしていました。
「真野さんも託児所なんですね」
「人見君だけだと怖すぎるでしょ」
「あ、うん、確かに」
「なんで?あっちのほうが良かった?なんとなく好きなのかなーって…子供が」と堀。
「別に好きなわけじゃないですけどね」
人見に片思いする森谷を揶揄う、堀なのでした。
「社長にばれるとかは」
「その点は大丈夫。今日はラグビー関係で外出してる」
エントランスでは、篠原を案内する平田が、小笠原社長は外出中だと誤魔化していました。
「社長はあいにく本日外出中でして」
「そう…小笠原社長にもインタビューお願いできればと思ったんだけど。いいわ、急にごめんなさい」
「あ、いえ」
平田は、篠原を「日の出園」と称した偽の託児所に案内しました。
「こちらが社内託児所日の出園です。社員のお子さんが保育園に預けられない時にお預かりしています。ですよね、担当の真野さん」
「ええ。お父さんお母さんにも何かあった時に近くにいると安心との声があります」
「普段こちらでお子さんを預かってるんですか?」
「はい。まだ遊具とかは少ないんですけど」
「シンプルでスタイリッシュなデザインというか…」
「そうね。ちなみに今日お子さんは?」
「はい、お預かりしています」
そこへ人見が、川戸の娘の凛の保育をしている現場に遭遇した平田達。
「今日は偶々一人ですけど」
「あちらが保育士の方?」
子供が得意な人見は凛を笑わせるのが得意です。
「保育士の方?」
「あー保育士っす」
順調に進んでいると思われましたが、ラグビー関係で出張している小笠原社長を目撃した、平田は驚きます。
「済みません。道を間違えました。こちらです」
「保育士の人見さん、問題発生。小笠原さんが社内をうろついているようなのでみんなに知らせて?」
「小笠原さんって社長?」
「違います」
「預かっている子供です。」
「脱走しちゃって」
「一緒に探しましょうか?」
「ここはスタッフにお任せして、我々は次のエリアに参りましょう。こちらです」
人見は堀、森谷と須永に連絡。
「すいません、大変です。今、平田さんから連絡あって社長がうろついてる」
「今日は外出中だって言ったはずなのに」
「だからやめたほうがいいって言ったのに」
「人見君、今、社長どこにいるの?」
「生産管理部の管理室のオフィスで何か配ってる。ラガーシャツだ」
なんと、小笠原は最初からラガーシャツを社員に配るだけで大した外出をしておらず、すぐ会社に戻って来ていたのです。
人見はラグビーのラガーシャツを社員に配る、小笠原を見て、人事部に彼を近づかせないように作戦を立てます。
「みんながこれ来て働いたら一体感が出ると思うんぢょ。ワンチームで足並み揃えて行くぞ」
「ではその他の取り組み…」
「取材か…」
「人見君、社長マークして」
「了解す」
人見は小笠原を引き付ける為に彼の手伝いをします。
「あれ?君、例の人事部の」
「これ配るんですよねお手伝いします」
「君、もしかしてラグビー好きか」
「あ、はい!それじゃあ行きましょう」
「次は4階か」
「先にマーケティング部と企画部回った方が早いですよ」
「3階の次は4階だろ」
「七五三は三の次は五すよ」
社長を平田達と鉢合わせないよう、フロアを変える人見。
「関係ない行こう」
人見が小笠原を引き付けている間、堀、森谷、富樫、平田は別の部屋にいる相沢今日子に子供がいると見せかけました。
「あの同僚に子供がいた時の手当てを」
堀は研修係としてリモートワークについて解説しています。
「弊社ではリモートワークを積極的に認めておりまして…子育てのために育児休暇が終わった後も、リモートワークを活用する社員も多くいます。」
「来週までに三パターンの企画をまとめていただけませんか?」
「しょうたろう、お菓子食べちゃダメ」
森谷は子育て支援を利用する演技をする、今日子に呼びかけました。
「子育て中や介護中の社員のニーズが多いので実現できて良かったです」
「すみませーん!同僚が仕事を抜けた時にその穴をカバーする社員がいる手当てがあるって聞いたんですけど」
「カバー手当ですね。お子様をお持ちの方とそうでない層の分断を防ぎます」
須永も、子育てでカバー手当ての制度があることを話を合わせます。
「カバーする社員の為の手当てなんだ」
納得する篠原。
そこへ、川戸をぶっきらぼうに扱った上司、柱谷が来ました。
「なるほど、そんな手当があるんですね。調達部の柱谷です、全く知りませんでした。そのカバー手当てってやつ、いつのまにかそんな制度があったんですね。ちょうど今、その件で相談に来たところだったので助かりました」
「あのやはりその取り組みには需要があるんですね?社内では周知されてないんですか?」
「全く初耳でした」
「実施している制度なんですよね?」
「連絡が行き届いてなくて」
「他の子育て手当てについてはご存じですか?社内の託児所サービスや、キッズイベント休暇」
「託児所なんてあったんですか?」と聞き返す、柱谷。
なんと、彼だけが人見達の作り上げた、「子育て支援」を知りませんでした。
「はい。1Fのエレベーターの奥に」
「1Fに?」と聞き返す、柱谷。
「篠原さん次にご案内したいところがあるので行きましょう。せっかく実現した制度が社員に伝わらないので難しいですね」
篠原と川戸の上司を案内しているところに、人見と小笠原社長とばったり遭遇してしまいました。
「お疲れ様です」
「なにか取材かな?人事部関係?」
「私、この度はお世話になります。リーブスジャパンの篠原と申します。宜しければ社長のお話を聞かせていただくことはできないでしょうか。お忙しいところ、取材をさせていただけませんか。先日、平田部長からご依頼があった。」
「別件で忙しいですよね」
「いやいや構わないけども取り組みとは」
「あ、社長」咄嗟に人見が機転を効かせてラグビーのことに話をすり替えました。
「これを取材してくれるのか!良いでしょう。是非お話ししましょう」
「今、取り組んでいる企画は他の会社では見ないような画期的なものでしたが」
「でしょう?」
「はじめられた切っ掛けのようなものは?」
「最近、社員の結束が乱れているような気がしまして。少しでもみんながワンチームになればと思いまして」
「素晴らしいですね」
「経済的な観点から言うと、国から補助金出ますよね?という部分もあるのでしょうか?」
「これに?」
小笠原はすっかりラグビーの件だと誤解したまま、篠原のインタビューを答えます。
「厚生労働省やこども家庭庁から、ものにもよりますが、支給総額の4分の3程」
「日本代表として活躍したいから国からもプッシュしていきたい」
人見は小笠原を話術で騙します。
「なるほどな」
「日本代表?」
「今後の日本代表的なもので」
「国から補助金出してもらわなくても、このくらい払える」
「今後の国からのポストを会社の資金だけで賄うということですか?」
「いや会社のお金なんか使いませんよ」
「会社のお金使いませんよ。ポケットマネーで」
「ポケットマネーで?国からの補助を使うのはなにもやましいことではないと思うんですね?全国の他の会社さんに広がっていくためには、負担が少ないというのの大事ですし…」
「全国の会社がマネするのか」
「競技人口が増えるの大事ですからね」
「人口がないとこれからの未来がありませんからね」
「こういう取り組みをしてトライしていこうってことすよ」
「そうだな」
「そうすよ」
人見と平田は篠原に怪しまれないように、誤魔化しました。
「済みません社長、体調が良くなくて」
「どうりで話がかみ合わないと思った。ゲラは出来次第、お送りします。」
「有難う御座います」
「こちらこそ有難うございました。では失礼します」
しかし、帰り際に、平田は篠原に嘘が分かりました。
「平田!本当にこれでいいの?こんなことをするために会社に残って出世したの?実現してないんでしょ、今日実施した取り組み、実際には実施していないことを書かせるつもりだったの?」
「申し訳ありませんでした」
「私に謝る事じゃない!普通なら記者として許せないけど、平田がよりによってこの件で私のことを騙そうとするなんて思えない。なにか理由があったんでしょ。まぁ期待はしていたけどね、ほんとうに変わったんだなって一瞬思ったから」
「こんなことで篠原さんに嘘付くとは思わなかったんですけど」
「私のことは良いのよ。もう済んだことだから。今の若い人の為に、このままでいいの?」
その会話を聞いていた、人見は小笠原に話を合わせます。
「これに補助金が出るとか訳の分からないこと言ってたぞ」
「海外の雑誌ですし感覚が違うんじゃないすか」
「そういう問題か?」
そして、凛が走りだし、小笠原に子育て支援策がばれてしまいました。
「どうなってるんだこれは。なんで却下した取材の件を受けているのかと聞いているんだよ。このまま載ったらどうするつもりだったんだ。訂正の連絡しておけ」
「取材の話が進んでおりましたし直前過ぎて言い出せなかったと思いますか」
「例えばなんですけど」
「まだなんかあるのか。なんだよ言ってみろ」
「いえ、申し訳ありません」
「やっぱりここにいたんすね。あの記者の人、日の出鉛筆の社員さんだったんすか」
人見は落ち込む平田をフォローします。
「私の三つ上の先輩。彼女が一番結果を出してきたの。昔の会社では、女性はどんなに仕事ができても部長より上にはなれなかったの。」
「え?おかしくないすか」
「おかしいわよね男女均等機会雇用法なんて名ばかりよね。結婚して出産してからもそう、職場に戻ったら前みたいな仕事はさせてもらえないみたいで雑用ばかり。あんな優秀な人でもあれしかやらせてもらえなかったので。本人も歯がゆかったと思う。でも上の人は本人の為とか家族を気遣っていると言ってサポートもしないで彼女のせいにしていた。」
「マザータクシー」
「マミートラック」
「今よりずっと露骨だった。篠原さんが辞めるのも当然。辞める勇気もなくて、私は居座って、何もしないまま20年経過した」
「それは辞めちゃいますよね」
「でも、篠原さんがなれなかった部長じゃないすか」
「里井常務のおかげ。後は時代の要請じゃない?さすがにそろそろ女性がいないとって。ここまで責任あるポストに任せてもらったのにいつも周りの顔色伺うばかりで何も果たせてない」
人見に励ましてもらったものの、落ち込む平田は川戸から意外なことを言われます。
「平田部長託児所の件なんですけど」
「本当に有難うございました。気持ちの問題なんですけど近くにいるだけで仕事に集中できて安心できたというか、試験的なんですよね。同期とかでも利用したい子が多かったので、本格的な実施、期待してます。プレシャーをかけているんじゃなくて、お礼が言いたくて」
「こちらこそ有難う。頑張ります」
平田は川戸の言葉に少しモチベーションが上がりました。
「みんなちょっといい?先日の子育て支援の取り組みについてなんだけど、もう一度、社長にもう一回言おうと思います。やっぱりこの件は子育て中の社員の為に、子育て以外で頑張っている社員のためにも必要な制度だと思うの」
「それでなにか作戦があるんですか?」
「部長その意気すよ」
「ない」
「ないんだ。だからみんなアイディア募集」
人事部の平田と人見達の様子を陰で見守る、里井常務。
「ここまで強硬に反対するって謎すよね」
「作戦会議なら作戦部長による須永にお任せください」
「ここまで強固に拘るの何故?」
「家庭のトラウマ?」
「自分のいないところで変えるのが嫌なんだろうな」
「メンツだな」
「しょうもな」
「金銭的な援助は国から補助されますしやったほうが徳じゃないですか?」
「頭ではわかっているけどピンとこないんじゃないかな」
「脱出ゲーム研修、ハラスメント研修とかみたいに社長にピンとこさせる研修」と人見。
「子育てしている社員の体験研修、例えば子供が熱を出した時とか」
「上司が部下の子供は熱出したってのは?」
「ですがあの社長が研修受けてくれるでしょうか。そういう研修を受けてくれる人ならそもそもこういったことは起きてません。あの社長に真っ向からぶつかって、心変わりをさせるのは相当難しいと言わざるを得ません」
「あ、めっちゃ良いこと思いついた。ラグビーすよ」
「この度は誠に申し訳ありませんでした。子育て支援策の決定について取材を受けたこと、社長の意にそぐわないことを勝手に進めてしまったことを深く反省しております。これじからは社長の采配の元、…ワンチームとなって会社に尽くしていく所存です。」
「ようやくわかったか」
「その反省と共に、社員の結束について愚案ながら思いついたことがあります。我々、役員や管理職が取り組む事。」
「なんだ言ってみろ」
「オールフォーワンワンフォーオールの精神を培うのに最も適したスポーツかと」
そこで、役員でラグビーチームを作る事を提案した、里井。
「里井、それだよ、そういうことだよ!早速会場を抑えてくれ?役員でチーム作るんだろ、あいつら走れるのか?それじゃあ若くて走れる奴を集めよう」
よって、小笠原常務は上機嫌になりました。
「里井、あれは?」
「チームメイトです。社長が若くて走れる奴とおっしゃっていたので」
チーム対戦相手は、日の出鉛筆社員の子供達です。
「子供達にラグビーさせて大丈夫そう?」
「大丈夫。外で遊ぶこと伝えてありますから」
ラグビーの対戦相手の社員の子供達には、人見が事前に遊ぶことを伝えていました。
平田はどの世代も参加できるように、タグラグビーにしました。
「タグラグビーにしたから。腰につけているものをとられたら負け」
よって、小笠原含むベテランチーム、人見達人事部、そして、子供達によるラグビー試合が開催されます。
「なんであそこを守らなかったんだ?いや私はね、スーパープレイをするように言ってない。チームプレイの為に責任を果たせと言ってるんだ」
「市川常務が持ち場を離れたので」
試合中に倒れた子供を気に掛けた、市川を責める状態になった、社長チーム。
「なんで私のせいですか。子供が倒れたんですよ。しょうがないじゃないですか」
「だって離れただろ?そのせいで私がカバーしなきゃいけなかったんですよ」
社長チームは結束力がなく、上層部同士が責任のなすりつけ合い。
「なにがラグビーで一体感だ。おかしいだろ。チーム編成だよ。不公平だろ。こっちは面倒見なきゃいけない子供がいて、そっちは普通にプレイが出来るなんて不公平だろ。これは公平以外の何物でもない。もういい、子供の面倒なんか見ながらラグビーなんかできるか」
「ですが社長、それが子育てしながら働く社員です。子供が熱を出したらどれだけ忙しくても抜けなければいけません。時にはベビーシッターを頼んで家系に負担を掛けながら働かなくてはいけません。彼ら彼女らはそうやって仕事してます。その人達をカバーしてくれる社員もいて、彼らの助け合いの精神は尊いですけど気持ちだけではやっていけません。疲弊して恨む社員もいます。そのことに責任を感じて自分が仕事を続けることを負担に思ってしまう社員がいるかもしれません。そのままでいいですか?!子育てだけではありません。病気や介護もあって自分もいつどうなるか分からない人もいます。だから私はそういった状況になった人とずっと一緒に働きたいと思ってます。だから、足並みそろわなくても不平等でも多様な働き方を認めてくださいませんか?それが…オールフォーワンだと思います」
平田は小笠原に意見し、人見含む人事部や他の社員達は心に響くものを感じるのでした。
その後、川戸は子育て支援を利用することが出来、社員達とチームワークで仕事がしやすくなりました。
「川戸チーフを筆頭にしてマレーシアに行くものを」
篠原は子育て支援が投入された日の出鉛筆を取材します。
「御社が導入された子育て支援策。以前のものとはかなり価値観が変わったように見受けられるのですがなにか導入のきっかけ亜は会ったんでしょうか」
「私は常々。子育ての視点を持った社員は我が社にとっての1つの武器です。そう思っておりまして…それぞれのバックボーンになった人間が1つのチームになる事で強くなる、これはラグビーにも通じる部分でして」
「社長、これで日の出鉛筆の評判も」
「うるさい、ただ言わされただけだ」
女性秘書には悪態をつくものの、小笠原の心に何か変化が芽生えたのでした。
「篠原さんインタビューのやり直しまで有難う御座いました」
「平田、今度は社長ぐるみで騙してないよね?」
「まさか。いやいやないです。」
「あの社長を変えさせるなんてどんな手を使ったの?
「私はなにも。優秀な部下がいるんです。私には想像をつかない波風立てまくる部下が。」
それは人見のことを言っていました。
「部長、なにもしてくれない」
「部長なにもしてくれないすけど何でもやらせてくれるじゃないすか」
須永の不満に、平田の長所を見つけて伝える仁美なのでした。
「じゃあ頑張って」
人事部は次の人の思いを繋げるタスキ…それは平田自身のことなのです。
そして、子育て支援の件が解決し、里井は平田に呼ばれました。
「まだ話していませんでしたよね。私が人見君をこの会社に呼んだ理由」
やんわりとした里井の声に、緊迫する間に身が引き締まる、平田なのでした。
人事の人見8話感想・みどころ
いつも周囲の顔色を伺い、人に合わせることで場の調和を保ってきた、優柔不断な、平田部長。
彼女は日の出鉛筆の人事部にとっては、母親的な役割が多く、母親目線でみんなを時に厳しく成長させようと四苦八苦していましたね。
小笠原社長には、意見を言えない彼女は、部長に就任したものの、いまいち自分のポストに思い悩む苦悩が伝わりました。
あの高圧的で、昭和の塊のような小笠原には委縮してしまいますよ。
マミートラックで社内から雑務を任せられ、責任感ある仕事を任せられなくなった川戸を救うべく、人見達と共に奮闘する姿は応援したくなりました。
小笠原に発覚して自己嫌悪になるものの、川戸が人見達が考えた偽託児サービスに自身も助けられたことを知り、持ち直した時は、瞳の輝きが違いましたね。
人見は今回、上司ということもあり、柔らかく一歩引いたところから、平田の人間的な成長を見守っているように感じました。
彼は本当に話術で人の心を掴むのが上手いですよね。
平田がマミートラックによって、育児中の親が仕事と居場所を失うこと、多様な働き方への理解を小笠原に訴えたシーンは、彼女が上司か社長だったらいいなと思いました。
最後に、平田を呼び出した里井は、人見が人事部に来た理由を急に明かします。
柔和な笑顔に隠された不穏なものを感じ取った、8話でした。