相棒24

相棒24 9話「カフカの手紙」

相棒24 9話「カフカの手紙」あらすじネタバレ

(カフカ)昨日、ぷーちゃんに会って、新しいお友達が出来たのよ。今日そのお友達のおうちにお泊りに来たんだけどびっくりなの。その子のお父さんはなんとこの国の王子様で、おうちは大きなお城なの。今、ぷーちゃんはレースのカーテンがあるふかふかのベッドの上でこの手紙を書いているのよ。ごめんね、眠くなっちゃったからこのお話の続きはまた明日。手紙を書いているの。みかちゃん勝手にいなくなってごめんね。でも私はこの冒険の旅に出てよかった。いつか必ず会える日が来る。その時はまた仲良くしてね。プーちゃんより。

カフカは、伊藤夏希とその娘、美香に向けた手紙を渡しました。

子供達に絵本を読み聞かせる彼は、体調不良を感じ、ベンチで休みますが、何者かに殺されてしまいます。

そうとは知らず、配達業者が沢山の風に舞った一万円を猫ババし、カフカの遺体に気付いたのでした。

住宅街の一角で、「カフカさん」と呼ばれた、1人の老人(小須田康人)の遺体が発見されました。

(伊丹)ガイシャえらい大金持ってたんだって?この紙袋に入れていたって話だ

(芹沢)紙袋に

(益子)【田中陸三】使い古しの万札で、しめて三千と五十二万。突風で一斉に舞ったらしいぞ。三千万

(麗音)そりゃなかなか壮観だったでしょうね

(伊丹)それだけの金を紙袋で運んだっていうのは…強盗か組織の金を奪って逃げたか

(芹沢)間違いなく犯罪、絡みの金ですね

(右京)そもそも殺人でもなさそうですが、遺体のどこにも外傷はありませんしね

(伊丹)…来やがったよ

(益子)検死してみないとはっきりした証拠は分からんがな。事件性はない、病死だ。平たく言えばこの仏さんは行き倒れだな

(芹沢)早く言ってよ

(益子)言おうと思ったらお前らが勝手に先走るから

(伊丹)お前の目は節穴か。仲間割れで殺されたって読みだっけ?行倒れ。撤収!天下の捜査一課がこんなことに関わってる場合か

(麗音)今来たばかりですけど

(芹沢)じゃあ後は特命係にお任せいたしましょう

(亀山)承りました。

(右京)何か身元が分かるものは

(益子)財布はあったが中身は現金のみで携帯も持ってなかった。これとこれ。ポケットにあったのがこれとこれ。このティッシュもそこらへんで配っているやつだ。身元の特定には繋がりそうにないな

(亀山)どこのどなたなんすかね。紙袋に3千万持ち歩く人って。あ、でも犯罪から身の金って線はあながち間違ってないかもしれないですよ。

(右京)非常に興味深いですねぇ

付近には3千万円の現金が入った紙袋が落ちていました。

捜査一課の伊丹(川原和久)、麗音(篠原ゆき子)、芹沢(山中崇史)は、事件性はないと判断します。

右京(水谷豊)と、亀山(寺脇康文)は身元の確認を押し付けられ、少ない手がかりから独自の捜査を開始します。

カフカは末期がんで、死因は心筋梗塞であることが分かりました。

角田課長【山西惇】といつも通り事件について話をする、右京。

(角田課長)おい、暇か?行き倒れの身元捜査やってるんだって?3千万もって道端で死んでたらしいな。そりゃお前、絶対真っ当な金じゃねぇよ。ちょっとは面白くなりそうじゃねぇの?

(亀山)右京さん、解剖の結果出ました。やっぱり直接の死因は急性心筋梗塞でした。ただ、ガンがあちこちで進行してて末期の状態だったみたいです。

(右京)おやそうでしたか

(亀山)ちなにみあの年周りの男性の行方不明届けは出ておりませんでした。そちらなにかわっかりました?

(右京)ええここ数年間の強盗事件を調べてみましたが該当するものは見当たりません。また紙幣番号も調べてもらったのですが、未解決事件と関連するものはありませんでした。

(角田)犯罪組織の金だとすれば、連中は表沙汰にはできねぇからな

(角田課長)やっぱり表に出せない金じゃねぇの益々面白そうじゃないか。トクリュウ絡みって線もあるんじゃねぇか

ふと、右京は、カフカが持ち歩いていた3千万の紙幣番号を独自で調べ、昭和と平成の年代から発行された貴重価値のある紙幣だと分析しました。

(右京)念のため犯歴がないか遺体の照合もお願いしてありますが、どうでしょうね。ああ、紙幣番号を調べる中で1つ興味深い事実が分かりました。3052万の内訳ですが、およそ3割が昭和59年から発行されているD1万円券、約6割が平成16年から発行されたE一万円券です。

(亀山)あれ?福沢諭吉の札って2種類あるんでしたっけ?

(角田)偽造防止の再審技術が導入されたんだよ

(右京)残り香渋沢栄一のF1万円券と聖徳太子のC1万円券。

(角田)一度銀行に預けりゃ返ってくるのは新しい札。今時、聖徳太子や古いほうの福沢諭吉はまず見かけねぇもんな。

(右京)30年あまりにわたって手元にため込んでいた金ということになりますねぇー

(亀山)手元にため込んでいた、30年以上も。

(角田)やっぱり表に出せない金なんだよ。ますます面白そうじゃねぇの。で、残りの手がかりは?

(右京)ありません。

(亀山)地道に聞き込みするしかないですね。いやぁなかなかっすね。殺しなら聞き込みにも動員欠けてくれますけど、行き倒れじゃあ帳場も立ちませんしね。

(右京)なにかと忙しいですからねぇ

すると、公園の親子から、男は公園で手紙の読み聞かせをよくしていて、公園を利用する子供達から「カフカさん」と親しまれていました。

ふと、夏希とママ友の女性、良枝がカフカを見かけないことを話しながら、すれ違いました。

(良枝)いつもならこの時間に来てるのに。

(夏希)体調悪い時あったんだよね。咳が止まらなくなったり。

(良枝)え、心配。

右京と亀山は2人に話を聞きます。

(右京)ちょっとよろしいですか?警察の者なんですが、この方に見覚えありませんかねぇ

(夏希)カフカさんよね。本人がそう呼んでくれって。本当の名前は。昨日もいつもの時間にいらっしゃらなかったので心配したんです。カフカさんどうかしたんですか?

(亀山)事件とかじゃないんですけども…カフカさんは急性心筋梗塞でお亡くなりになって

(夏希)2週間ほど前に、うちの娘が公園でぬいぐるみをなくしてしまって、カフカさんも一緒になって探してくれたんです。カフカさん、娘がしょげ返っているのを見て、可愛そうに思ってくれたみたいで、次の日から毎日、娘宛にぬいぐるみからの手紙を書いてくれて。娘がつけた名前なんです、そのぬいぐるみ。娘の元を離れて世界中から冒険の旅に出ているって話でした。カフカさんが話してくれる物語がとても面白くて。娘もぷーちゃんをなくしたことなんて忘れてすっかり夢中になって。

(良枝)うちの子も楽しみにしていました。

カフカは、美香がぬいぐるみをなくした時、必死に探してこう言いました。

(カフカ)いいんですよ、暇を持て余してるんで気にしないでください。美香ちゃん必ず見つけてあげるからね。

カフカといえば、大切な人形をなくして悲しむ少女の為に、「人形からの手紙」と称して、その子どもの心を癒したフランスの文豪です。

(右京)なるほど。カフカの手紙そのままですね。なんとかお嬢さんを励まそうとあの、文豪の逸話を真似したのでしょう。

(夏希)ええ、私達も全然知らなかったんですけど、そんなことを仰っていました。

(右京)優しい方だったんですね、カフカさんって

(亀山)なんすかそれ。ああ、ごめんなさい、その話が見えないんですけどカフカって

(右京)かの20世紀の文豪、フランツカフカのことですよ。

(亀山)聞いたことがあるようなないような

(右京)変身という小説が一番有名ですかねぇー

(亀山)変身!高校の時、読みました。朝、目が覚めたら芋虫になっていたという

(右京)人生の不条理を描いた文学史に残る傑作ですねぇーフランツカフカは、1924年、結核で40歳の若さでこの世を去るのですが、その前の年、恋人のドーラと散歩している時、公園で泣いている少女と出会ったんです。どうしたんだい?とカフカが効くと、少女は人形をなくしたのというのです。カフカは少女を気の毒に思い、3週間にわたって人形からの手紙を書き続け、少女に読み聞かせたんです。偉大な作家が1人の少女の心を癒すためだけに来る日も来る日も人形からの手紙を書いた。恐らくお亡くなりになられた方は文学に造詣がある方だったんでしょうね。そのお手紙、拝見出来ますか?

男はその話になぞらえて、人形をなくした少女の為に読み聞かせをしていました。

美香はカフカのことを知って、ショックを受けました。

(夏希)美香、カフカさんはね急なお仕事で、遠くに行かなきゃいけなくなったの。ぶーちゃんからのお手紙はカフカさんの元に届くから読んであげられないのよ。

(美香)お手紙はカフカさんが書いてたんでしょ?カフカさんもいなくなっちゃったの

(夏希)お客さんがいるからお部屋に行こう

(右京)美香ちゃんはカフカさんが大好きだったんですね。

(良枝)カフカさんが子供が好きだったと思います。子供ってそういうの敏感ですから。美香ちゃんも他の子供達も本当のおじいちゃんのように慕っていたんです。

(亀山)カフカさんは以前からよくあの公園に?

(良枝)先月くらいからかなーよく見かけるようになったのは

(右京)じゃあ最近、越していらしたとか?

(亀山)近所に住んでたんですかね?

(良枝)だと思うんですけど

(良枝)先月。他のママ友に聞いてみますけど、プライベートな話は誰も聞いていないんじゃ

(亀山)なんかこう身元に繋がるようなヒントはないすかね

(右京)可愛らしい便せんですね

(良枝)カフェで買ったんですよ

右京と亀山は男が使っていた封筒を扱う近所の喫茶店を訪れ、店主、美幸(宮本真希)から話を聞きます。

(亀山)こちらの男性をご存じありませんかね、こちらで封筒と便箋を買ってるはずなんですが。先月、この方、お亡くなりになりまして。事件とかじゃないんですけど、お住まいとかお仕事のことなんか聞いてませんかね?

(店主)一度いらっしゃいました。2週間前だと思います。いえ。会話らしい会話しなかったので。このお店、締めることにしたんです。

(右京)素敵なお店なのに。失敬、立ち入った話をしてしまいました。

(亀山)カフカさんか…犯罪絡みの金っていうのは見当違いだったんですかね?ただの年金暮らしの優しいおじいちゃんだったとか。

そこへ、鑑識の益子から電話が入りました。

(益子)指紋、大当たりだったぞ。あの仏さん、大原隆一だ。聞き覚えあるだろ?

(右京)あの大原隆一ですか?

(益子)バブルの亡霊が35年経って今頃、姿を現したってわけだ

やがて、益子から、カフカの本名が大原隆一で、「バブルの亡霊」と呼ばれた、投資家集団「龍醒」の筆頭だと分かりました。

(右京)大原隆一はバブル期に仕手集団を率い、株価操作で莫大な亜利益を得ました。

(角田)バブル紳士なんて呼ばれたあくどい大金持ちが何人いたか。3千万くらい隠し持っていて当然だな

(右京)1987年に所得税法違反で一度、逮捕歴がありますねぇ。

「カフカ」こと、大原は一度、所得税法違反で逮捕歴がありました。

(角田)そこをとっかかりに捜査の網を広げようとしたが、尻尾を捕まえきれなくて執行猶予付きの判決で終わったんだ。

(亀山)じゃあ犯歴データの指紋もその時の?

(右京)ええ。その後も数年間はバブルを謳歌していたようですよ。しかし、バブルが崩壊して株価が暴落すると彼を取り巻く状況も一変しました。数億に及ぶ借金を背負うことになり、ある日、忽然と姿を消した。

(角田)その暴力団ってのが銀龍会で、大幹部って言うのが、星川誠。大原は星川の何億っていう個人資産を預かって運用してた。それが全部ぱぁ。星川が激怒して暗殺部隊を作ったって当時噂になったんだよ。

(亀山)捜査はしなかったんですか

(角田)死体が上がっていないのに出来るわけないだろ

(亀山)それはまぁそうか

(角田)それにしても大原隆一が生きていたって驚きだね。瓢箪から駒だな。しかし、そのカフカさんだっけ、それと大原って言うのがちっとも結びつかないな

(亀山)いや昼間利いた話だと、優しいおじいちゃんて感じで。なんで君達はいるの

右京と亀山と角田の会話をいつのまにか立ち聞きしていた、伊丹、芹沢、麗音が手柄を横取りしようと待っていました。

(芹沢)あの仏さんの正体が分かったって小耳に挟んだんで

(麗音)有名人だったんですって?

(亀山)さては手柄の匂いに吸い寄せられえたか

(芹沢)そんな人聞きの悪いこと言わないでくださいよー。まぁ3千万が犯罪から身の金っていう可能性もありますから、一応、ね。

(伊丹)特命係がちゃんと仕事してるか見に来たんだよ

(亀山)さっさと撤収したのに何言ってんだろうね

(伊丹)警部殿、多少の協力はやぶさかではありません。

(右京)これはこれはご丁寧にどうも有難う。

(亀山)課長、ご唱和お願いします

(角田)(亀山)暇か!

花の里で、右京と亀山は、記者をしている亀山の妻の美和子に確認します。

(美和子)うーん、大原隆一 なんとなく覚えてるわ。

(茉梨)【森口博子】バブルかーそんな時代ありましたね。身元が分かったのにまだ捜査を続けなきゃいけないんですか?事件じゃないでしょ

(亀山)あ、その頃は赤坂の芸者さんでした?やっぱりこういい思いとかしたんですか?

(茉梨)ええ。駆け出しですけどね。内緒です。

亀山はバブル期に、赤坂で茉梨が芸者をしていたことに少し触れました。

(右京)大原隆一が30年間以上の間、どこで何をしていたのか?先月から何故突然あの公園に現れ始めたのか?3千万を持ってどこへ向かおうとしていたのか?まだ謎は沢山ありますからね

(亀山)右京さんがこうなったらだれにも止められませんからね

(美和子)ああこの大原の記事を書いた村沢って人、帝都時代の大先輩だわー中途退所してフリーライターになったんだよね

(右京)美和子さん、彼に話を伺えますか。

右京と亀山は、美和子に同席してもらい、美和子の帝都新聞時代の先輩、村沢榮治と喫茶店で会い、話を聞きます。

(村沢)そうか、生きてたんなら会ってみたかったな。

(美和子)村沢先輩は大原にかなり食い込んでましたよね

(村沢)何度も取材したよ。なんか妙に馬が合ってね、プライベートな話も色々聞かせてくれたよ。

(美和子)やっぱりバブルはすごかったんですか?金遣いとか

(村越)ああすさまじかったな。その金を湯水のように使った。座っただけで月に何十万もする高級クラブを一晩で何軒も梯子して稼いで。何百万もする時計を女の子たちにプレゼント。

(美和子)バブルの崩壊で一変した

(村沢)天国と地獄だ。金になるものは全て売っても何十億って借金が残った。なかでも銀龍会の取り立ては苛烈だったらしくてね。自己破産すら許されなかったみたいで。最後に会った時は別人みたいだった。電車賃にも事欠いててね。

(亀山)戸籍を見るとご家族がいたそうですね

(村沢)奥さんと3つか4つになる女の子。

(亀山)奥さんが紀子さん、娘さんが美幸ちゃん、離婚したようですけど…。

(村越)2人に迷惑かけたくなかったんでしょうね。最後会った時、別れたって言ってました。

「カフカ」こと、大原の妻は大原がバブル崩壊と共にできた借金のせいで、ヤクザの銀龍会に追われていました。

(亀山)奥さんは大原が夜逃げした翌年、亡くなっていますが…。

夜逃げを繰り返し、当時幼かった美幸が朝、起きると首を吊って命を絶っていました。

(村沢)自死ですよ。大原が失踪すると銀龍会は奥さんに刃を向けました。追いかけるぞ。幼い子供を連れても逃げても逃げても追いかけられて、奥さんはとうとう…。

(亀山)お子さんは?

(村越)分かりません

(右京)大原さんは文学に造詣が深かったんじゃありませんか

(村越)ああ、そうでした。若い頃は児童文学の作家になりたかったって話、聞いたことがあります。元々はピュアな文学青年だったようです。作家になる夢に破れてその反動で金の亡者に成り下がったって笑ってました。それにしても35年か、長いですね。大原はどんな思いで過ごしてきたのか。

ふと、亀山は、美香の母、夏希から連絡がありました。

右京と亀山は、美香から、カフカが交通整理をしていたことを知りました。

(夏希)おじさん達に、さっきのお話教えてあげて

(亀山)美香ちゃん、おじさん達怖くないよ。糸結んで糸結んで引っ張るよ

美香に変顔をしてリラックスさせる、亀山。

(右京)カフカさんのこと教えていただけますか

美香はカフカから交通整備の仕事をしていたことを聞いたことがありました。

(カフカこと、大原)カフカさんもね、大きなビルの工事現場で働いているんだ。

(美香)お仕事行かなくていいの?

(大原)働いているのは夜中なんだ。ヘルメットを被って赤い棒を振っている人を見たことない?

(美香)ある!

(カフカ)そう、カフカさんはみんなが危なくないようにいつもあの赤い棒を振ってるんだよー

(亀山)警備員ってことですかね。大きな工事現場の警備員なんて数えきれないほどありますからねえ。どこから手を付けたらいいのか

(右京)絞り込めると思いますよ。遺留品の…ティッシュ。お話してくれてどうもありがとう

(美香)カフカさんにまた会える?

(夏希)美香、おじさん達を困らせちゃだめでしょー

(右京)きっと会えると思いますよ

その頃、伊丹達は、カフカこと、大原隆一がかつて働いていた工事現場で、警備員として働き、「内山洋」と名乗っていたことを知りました。

右京達と連携し、内山の雇い主と話を聞くことに。

(工事現場の男)これって…ああ、内山さん

(芹沢)ええ、もう話は通してありますので。

(伊丹)我々の力をもってすれば、この程度のこと朝飯前ですよ

(右京)こちらでは内山洋と名乗っていたということでしたねぇ

(亀山)あとは我々が。天下の捜査一課の皆さんお疲れ様でした。

右京と亀山は、内山として働いていた、雇い主、西本と息子の文哉に話を聞きました。

(大原の上司、西山の息子、文哉)内山さんは勤務態度は至って真面目で、最も頼りになるベテランでした。仕事をさぼるなんて一度もなかったのに、連絡もつかないし、社員寮にもいないし心配していたところでした。父はもう引退してるのですが、西山さんがここで働くようになった経緯は分かりかねるので。

(右京)大原さんは社宅にお住まいだったのですね

(西本)あとは俺が話すお前は下がってなさい。大原さんは私の幼馴染でした。子供の頃から頭良くて、作文が上手くて。

(右京)若い頃は作家になりたかったと伺いました。

(亀山)大原さんがここで働くようになったのは

(西山)そんなこと言ってましたね。莫大な借金を抱えてから、仕事上の付き合いがあった人間に見捨てられたみたいで。

西山は銀龍会から追われ、妻と子を置いて、一人ですべてを抱え込む大原から助けを求められたことがありました。

(大原)頼む、もうお前しか頼れる人間がいないんだ!

(西山)おい、顔をあげろ

泣きつく彼を受け入れ、西本の工事現場で偽名で働くことになったのです。

(西山)当時は、まだこの会社も小さかった。匿うのはいいが遊ばせておく余裕はありませんでした。内山洋という仮名でここで働いてもらうことに。

(右京)ご家族のほうは?

(西山)奥さんの実家に避難させていたうちはこっそり連絡を取っていたのです。しかしそこに、ヤクザが押しかけて来て、奥さんは子供を連れて逃げた。そのあたりから連絡が取れなくなったようで

(亀山)当時は携帯もない時代でしたね

(西山)2人のことが心配でたまらなかったようでしたが、表立って動くわけにもいきませんからね。休みもとらず朝から晩まで必死に働くことで、あいつはどうにか正気を保っていた。大原の奥さんが自殺したことはご存じですか?

(右京)ええ、存じ上げております。

(西山)風の噂で大原がその事実を知ったのは、奥さんが亡くなってから5年後。あの時はひどく取り乱してみていられなかった。それから大原は娘の美幸ちゃんの行方を捜しました。探偵を使ってね。でも全く見つからなくて。10年ほど経って諦めたようでした。それが半年前、また探し始めたんです。

大原の壮絶な過去と、時間が許されない病魔を抱えた人生だったことを知る、特命係。

(右京)悟ったのでしょうねー自分の死期を。大原さんは末期ガンでした。

(亀山)娘さんの行方はわかったんですか?

(西山)ええ。

大原はガンで自分に時間がないと知りましたが、今更父親など名乗れないと思うのでした。

西本は娘に会うよう、説得していました。

(大原)どの面下げて会えばいい。30年間放りっぱなしで今更父親なんて名乗れるか

(西本)会ったら許してくれるよ。ずっと探してたんじゃねぇか、会いたいだろ、会いたくてたまらないだろ。

大原が既に吐血していたのを間近で見ていた西山は何も出来なかった事を今でも思い返して、悔いていました。

(亀山)娘さんの連絡先はお聞きになったんですか?

(西山)教えてくれませんでした。

(亀山)右京さん、あの公園に現れるようになったのは…

(右京)大原さんの部屋を拝見出来ますか?

大原の社員寮の部屋を案内した西山。

(西山)どうぞ、あいつの日常はここと職場の往復だけ。贅沢一つすることもなし、酒もたばこも辞めて、仙人みたいにひっそり暮らしてました。

(亀山)給料はちゃんと払ってたんですけどね

(西山)ええ、安月給ですけど

(亀山)じゃあお金貯まってたんでしょうね

(西山)だと思いますが、偽名じゃ銀行の口座も開けませんからね

(亀山)3052万は犯罪絡みなんかじゃなくて35年間コツコツ働いて貯めた金だったか。

右京と亀山は、大原が汗水たらして働いて得た金を貯金し、娘に渡そうとしていたことが分かりました。

(右京)ここが金庫代わりだったのでしょうかね

社員寮の部屋の畳の下には、探偵の調査で、娘の美幸を見つけた調査報告書も見つかりました。

その頃、絵本を手に取る、喫茶店の店長、中北美幸(宮本夏希)を再度、訪ねました。

(亀山)先日はどうも、中北美幸さんですね。4歳までは大原美幸さんでしたね。あの男性は大原隆一さん、あなたのお父さんでした。驚かないんですか?

(美幸)そうじゃないかって思ってました。

(亀山)だったらなんでこの間話してくれなかったんですか?

(美幸)私と母を捨てた人です!

(亀山)大原さんのこと覚えてたんですか?

(美幸)いいえ。でも周りから散々聞かされました。どれだけ人に迷惑をかけたか。母が死んだのもその人の性です。ヤクザに殺されたって聞いてましたけど。とにかく私の中ではとっくに死んだ人なんです。

(亀山)大原さんはあなた方を捨てたわけじゃなかったようですよ。お母さんがあなたを連れて逃げているうちに連絡が取れなくなったようです。その後も探偵を使ってずっと行方を捜して、35年も経ってようやく見つけ出したんですよ、あなたを。それから毎日あのベンチに座ってあなたを見守っていた。すぐそばにいるのになかなか一歩が踏み出せなかったけど、便箋と封筒を買うためという理由を見つけて。思い切ってこの店に足を踏み入れた時、恐らく相当緊張していたでしょうね。

(右京)立ち入ったことをお伺いしますがどうしてこのお店を閉めることに

(美幸)夫がギャンブルにはまってろくでもない連中からお金を借りたまま行方をくらましたんです。私が肩代わりするしかなくて。必死の思いでお金貯めて、ようやく掴んだ自分の城も手放すしか。男運がないところも母に似たんですね。

(亀山)もしかしたらその借金取りが最近、ここに来たんじゃないんですか?

銀龍会のヤクザが、美幸の喫茶店に来たのを偶々見た、大原。

(ヤクザ)恨むんならバカな旦那のほうですから。じゃあ来月また。

(亀山)大原さんはその話を聞いていた。自分の部屋に一旦戻って。あなたの窮状を救うためにお金を届けようとしてその途中…。

大原は娘の危機を知り、喫茶店の社員寮の床下に蓄えた3千万を手に取り、美幸の元へ向かおうとしました。

その途中、心筋梗塞が起こり、息を引き取ったのです。

(美幸)どうせ汚い金なんでしょ

(亀山)いいえ。35年間、真面目に貯めて働いたお金です。あなた方の親子関係が証明されれれば遺産として相続出来ます。今のあなたにとって必要な。美幸さん今ご遺体は、鎌田東署に送致されています。このままだと役所に無縁仏に

(美幸)そんなお金いりません。勝手にしてください。今更許せるはずがないじゃないですか!子供の頃、楽しい思いをしたことなんて一度もなかった!一度も!ずっと許せなかった!私達を捨てた父親を。

子供時代、ヤクザに追われ、父の大原が残した借金のせいで、母と息も詰まるような生活をしていた、美幸。

(右京)1つよろしいでしょうか。大原さんのことを覚えてないと仰いました。大原さんがしかし、この店に来た時父親じゃないかって思ったとおっしゃいました。どうしてそう思ったのでしょう?

(美幸)声です。父親と暮らしていたことなんて覚えてません。でも1つだけ覚えていることが、寝る前にいつも物語を聞かせてくれたんです。大人になった私が世界中を冒険する物語でした。それが楽しみで仕方なかった!顔も覚えてないのにあの声だけはずっと、ずっと私の中に残っていて。

喫茶店に便箋と封筒を買いに来た大原の声に、はっと我に返った、美幸。

(大原)あの・・これください。

(右京)エアツェーリング。このお店の名前はドイツ語で物語。あなたはご自分の大切な城を物語と名付けました。どれほど憎んでいても大原さんに聞かされた物語があなたの支えになっていた。そう思えるのですがねぇ。

(美幸)もう帰ってください。父は35年前に死んだんです

その後、蒲田東署に美幸が遺骨を引き取りに行き、遺産については相続を放棄したとおのこと。

(亀山)右京さん、蒲田東署に美幸さん来たみたいです。遺骨を引き取りたいって

(右京)そうですか、それは良かった

(亀山)ただ遺産相続については放棄すると、まぁあの人らしいのかな。でもまあこれで大原隆一も浮かばれますかね。ところでさっきから何を書いているんですか

(右京)読むのは君のほうがいいかもしれません

右京はカフカのふりで、手紙を美香に書きました。

美香が人の死を心苦しむことなく、受け入れるようにするための配慮です。

(カフカ)美香ちゃんへ。美香ちゃんまた明日って約束したのに突然いなくなってごめんね。カフカさんは神様に御呼ばれして今天国にいます。ここは静かでいいところです、毎日楽しく過ごしています。だからカフカさんのことは心配しないでください。美香ちゃんも大きくなったら冒険の旅に出るでしょうね。その道中、きっとどこかでぷーちゃんと再会できます。その日を楽しみに元気に過ごしてください。美香ちゃん、もしどうしてもカフカさんに会いたくなったら目を閉じてください。そうすればまた会えますよ。君のおかげで忘れていた大切な時間を思い出すことが出来ました。本当に有難う、カフカさんより。

右京と亀山には幽霊になったカフカが見え、カフカは2人に一礼をしました。

(亀山)はい、どうぞ

(美香)ありがとう

亀山は、美香にカフカこと、大原の手紙を渡しました。

相棒24 9話「カフカの手紙」感想・みどころ

「カフカさん」という子供達に読み聞かせをしている、定年近い年齢の大原。

サンタクロースのような穏やかさの背景が壮絶で、心が痛みました。

バブル時代に、豪遊し、一度は逮捕歴があったり、暴力団の銀龍会のボスの個人資産を預かってしまったことが不運でした。

彼の一人娘、美幸は夫がギャンブルに依存し、生い立ちによるトラウマを思い出した気持ちはわかります。

でも、自分は母親に似て男運が悪いなんて、そんなこと言うもんじゃありませんよ。

育ててくれた母に、ちょっとひどいなと思ってしまいました。

いつ銀龍会に見つかり、誘拐や、人身売買にような犯罪に遭ってもおかしくないですよね。

美幸が言うように、多くは語られていないものの、逃げ続けて身を守るしかない楽しいことが一度もない人生と言えます。

しかし、美幸に絵本を読み聞かせた大原の愛情はたしかにそこにあり、涙が止まりませんでした。

美香との時間を取り戻すかのように、美香に物語を読み聞かせることで、優しさのギフトを贈っていた大原。

「君のおかげで忘れていた大切な時間を取り戻すことが出来た」と右京の字で書かれた手紙は涙腺が緩みっぱなしです。

美幸が彼の遺産は受け取りにくいものの、彼の遺骨を引き取ったことで切ないラストとなりました。

 

data-ad-format="rectangle" data-full-width-responsive="true">
data-ad-format="rectangle" data-full-width-responsive="true">

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です


上の計算式の答えを入力してください

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください