相棒23

相棒23 12話 見捨てられた少年が見つけた生き抜く知恵

相棒23 12話あらすじネタバレ

右京(水谷豊)の脳波に異常が見つかり、検査入院することになりました。

「脳波の数値の刻みが細かいです。リゾナント式で。しばらく検査入院をお願い致します」

ただ検査を担当する院長は研究が本職で、経営は素人です。

「聞いてください、うちの経営ボロボロなんですよ」

「私脳神経外科の研究が本職で、父の後を継いで院長になったもので、経営というのはどうも苦手で」

「ああそうですか」

医師と看護師の話から、右京は、病院の存続が危ぶまれる程の経営難に陥りました。

医師は岡村という男からライリー・櫻井を紹介されました。

「病院経営に悩んでいる先生が多いそうですね。」

「やはりそうですか」

「当社は病院経営に特化したスペシャリストです。過去にも何件もの病院を瀕死の状態から救ってきました。」

その頃、ライリーも秘書たちから、右京が入院している病院をターゲットにすることを伝えていました。

「クライアントの所有する書類は揃えました」

「ノープログレム」

「次のクライアントが必要ですね」と、理沙

「ハニーです」

その後、飯窪郡司という高齢者男性にメイクを施す、高橋理沙。

「演じる必要はないの。お茶を飲むときは本当にお茶を飲む。話すときは本当に話せばいい。あなたの言葉でね、有澤君、時計を」

その後、有澤は飯窪に自慢の高級腕時計を貸しました。

「丁寧に扱って下さい。あなたに買える値段じゃない」

「開幕です。ファーストステージ、夢を与える」

ライリー達は変装し、早速、医師の岡村と接触しました。

「うーんやはり当院はコンサル料をお支払いする余裕がですね…」

「弊社はクライアントから報酬を得るのではなく、共に富を生み出していくことをアジェンダとしております。具体的な出資のプランを建てました。」

「具体的には?」

「兵は神速を尊ぶといいます。今日はご挨拶だけでなく具体的な出資のご提案も用意してきました。高橋君…」

「こちらは弊社が好意にさせていただいている、白鳥さんです。所謂、エンジェル投資家といえば分かりやすいでしょうか。」

「白鳥です、私の資産を是非、地域医療再生に活かしていただきたいと思っております」

「それは有難いです。当院は本当に苦しい状態で死て」

「白鳥さんは自由人でして、ビジネスの場だと緊張してしまうんですよ」

その後、ライリーの資産家、白鳥は右京と、右京の見舞いに来ていた、小料理屋「花の里」の茉梨(森口遥子)と休憩所で対面しました。

「入院だというからびっくりしましたよ」

「脳波が異常に細かいだけです。」

「だから杉下さんは細かいことにこだわってしまうんですかね」

そこへ、「白鳥」を名乗る飯窪が病院内のインスタントの緑茶を買いに来ました。

「あーあ、もう寿命が縮まるわ。ったく…なんなんだよこれは」

お茶の機会は水の補充が必要。

「あのアイスティーだったらありますけど如何でしょうか?」

茉梨がアイスティーを飯窪に差し出しました。

「ここの患者さんですか?」

「いや俺は患者じゃなくて資産家。」

「どうりで立派な腕時計をされていると思いました。アンソニー&アイアンズですね?」

「え、ええ」

右京は、飯窪が、有澤から貸してもらった高級時計をしていることに着眼点をあてます。

「有名なメーカーなんですか?」

「ええ。イギリスの高級メーカーです」

「これは素晴らしい」

そこに、ライリー・櫻井(岩谷健司)と名乗るコンサルタント会社の代表が現れます。

「白鳥さんこんなところにいらっしゃったんですか」

「院長先生、こちらは」

「私、この病院のコンサルタントを任されることになりました、ライリー櫻井と申します」

「ライリー?」と聞き返す右京。

「いえ、母方の祖父がイギリス人で」

「皆さん社員の方ですか?」

「ええ、弊社のスタッフです」

「皆さん南国にでも社員旅行を?」

「よくわかりましたね」

「いえ、日焼けされているので。たとえば彼の手首、今は小さな腕時計をされていますが、旅行の時は大きな時計をしていたのでしょうね。その分、肌が白くなってます」

「それがなにか?」と有澤。

「ああ。皆さんTPOに合わせて時計を変えるなんてすばらしいことです。本来の趣味はこういう時計なのではないですか?それにこの時計、日本の時差とはズレています。時差でいえば、例えばサイパン辺りに合わせたままですよ。あなたも皆さんと共にご旅行に?」

「そういえばみんなで親睦を深める為に社員旅行に同行していただいたんですよ」

「そうですか。あ、でも白鳥さん、腕に時計の痕がありませんね」

「白鳥さんは室内で過ごされるのが好きでね。ところでこのやりとりになんの意味があるんですか?」

「すいませんこういう人なんです」と、茉梨。

「細かい事が気になるのが僕の悪い癖」

「悪い癖なんですか?話題が広がるのは素敵なことです」

間もなく、ライリー達と入れ違いで、右京の見舞いに、亀山(寺脇康文)と、妻で帝都新聞ジャーナリスト、美和子(鈴木砂羽)が来ました。

「え?なんかあったんですか?」

「亀山君一つお願いしてもいいですか?」

「はいはいはいはい、なんでしょう?」

入院中ということで自分では動けない右京は見舞いに来た薫(寺脇康文)に協力を要請します。

右京はライリー達の尾行を亀山に頼みます。

「ありました!83コンサルティング!」

「会社の実態はあるようですね。そのまま引き続き、張り込みを継続してください」

まず、ライリー櫻井達のアジトであるビルを特定しました。

その頃、「投資家の白鳥」として最初の「仕事」をした飯窪は、高橋から給料をもらっていました。

「約束の20万円です。大事に使ってくださいね」

「飯窪さん有難うございました」

「なんか大きな仕事をしたみたいだ」

「自分じゃなくなったみたいでしょ?」

亀山は偶然を装って白鳥に居酒屋で接触。

「一人出てきたんですけどえらい服装変わってますよ」

「警察ということは伏せて、接触していただけますか?」

電話で報告する亀山に、右京は簡単な指示を出して、白鳥こと、飯窪への接触を頼みました。

「酎ハイいっちょ、ああうまそう!」

「良い飲みっぷりですね」

「ひと仕事終えた後でさ」

「俺なんかしけたもんでさ」

「兄ちゃん一杯奢ってやるよ」

「うわぁお金持ち。遠慮なく」

その後、夜に病院に戻って、右京に報告する、亀山。

「あのおっちゃんお金持ちには見えませんね。住んでるのも安いアパートでした」

「なるほど」

「詐欺かなんかっすね」

「その可能性はありますね。美和子さん、会社の情報は?」

「ああ」

右京は亀山の妻、記者の美和子にも情報提供を頼んでいました。

「コンサルタント会社の登記も確認しました。全部、本当みたいです」

「本当か嘘を見抜くとなると何が本当で何が嘘か分からなくなります。思った以上に巧妙な相手かもしれませんねぇ。あのライリーという人物」

その頃、ライリーは右京が入院する病院の院長、寺田との電子契約書の締結が完了しました。

「寺田院長との電子契約書、締結が完了しました」

有澤から報告を受ける、ライリー。

「話を進めましょう。セカンドステージ金を与える」

翌日。

右京は既に寺田院長が、櫻井と契約を結び、前金の一千万が振り込まれていることを知りました。

「もう契約してしまったのですか?」

「いえなにか問題でも」

「もう少し、慎重に話を進めるべきでは?」

「大丈夫ですよ、既に一千万円振り込まれていました」

「院長から入金を確認しました。」

「これで信用したでしょ」

「サードステージ、仲間を与える。」

小さな病院なので理事は最少人数の3人です」

ライリーは既に、病院の再築の話を寺島に勧めました。

「院長には理事長である私が兼任しております。」

「分かりました。病院の経営の再建にあたり、理事の増員を提案します。」

「あ、そうしますと理事の報酬が…」

「ご心配なく、理事になるのは弊社のスタッフです。給与は弊社から支払いますのでリスクはありません。寧ろ大きなベネフィットがあります。我々が病院の理事になることで、金融機関などとの対外交渉における信頼度が飛躍的に上がります。」

「なるほど」

「我々4人は病院再建のスペシャリストです。ぜひ、仲間として受け入れていただければ」

院長は仲間ができたとばかりに大喜び。

経営に食い込むコンサルの怪しい動き、再建案の裏には巧妙に仕組まれた罠がありました。

「照明は柔らかい方がいい。患者に安心感を与えたい」

ライリーは病院再築の為に提案する振りをします。

「そういうもんですか」

「早速、病院の再築に着手しているようですね?あなたが病院の理事になったと聞きました。」

「昨日の患者さんですね。ええ、寺田院長に寄り添ってサポートするために。」

「至れり尽くせりですね」

「あなたは?」

「ああ、同僚です」

「一つ宜しいですか?全部で7名になった理事のうち元の理事は3名。そしてライリーさんの会社のスタッフが4名。つまり、理事会で多数決になった場合はあなた方の主張が通る事になる。例えば院長を理事長から解任することもできるわけですねぇ」

「ええ何を言ってるんですか?」

「ああ、理論上はそういう可能性もあるという話ですね」

「私達はあくまで病院の経営を強化するための仲間ですよ。」

「杉下さんおかしなこと言わないでください」

すっかりライリーに騙されている、寺田院長と、彼を巧みに誘導するライリーのペースに飲み込まれる、右京。

「ところでライリーさん、あなたのスーツですが。」

「今度はスーツですか?」

「イギリスの老舗メーカーのものですね・先日、お会いした時もそうでした。」

「相変わらず、細かいですね」

「細かいことが気になるのが?」

「あなたの悪い癖ですね。スーツはよくそこで買うんです」

「よくご存じで」

「院長、完全に信用しちゃってますね」

「自分だけは騙されないというバイアスがかかるものです。君、ライリーが着ているスーツがどこか調べてもらえませんか?」

「亀山くん、あのスーツ、素晴らしき嘘つき野郎の映画の有名なスーツです。主人公の詐欺師が身に着けているものです」

ライリーはその映画の役者が着ていたスーツと同じ老舗のテーラーから買っていました。

「あのスーツを取り扱っているのが、老舗のテーラー一店舗だけです。ええ。ライリーはそこの上客だってことが確認できました。円安の影響もあってバカ高いのに支払いはいつも現金でしているって。」

「なるほど、現金ですか」

その頃、医師役の男性をキャスティングした、ライリー達。

「セットアップは完了。ファイナルステージに進みましょう」

翌日。

ライリー達は、その医師の土居役の男、小林圭介を寺田院長と会わせました。

「いやー仲間も増え、資金も順調ですね。ところでそちらの方は?」

「医師の土居と申します」

「先生ですか?新しい仲間ということですか?」

「早速ですが理事会を始めましょう。私から提案があります。この土居先生を当院の理事長として推薦したい!」とライリー櫻井。

「はぁ?」

寺田は土居の存在に目を輝かせました。

その後、どんどん騙された岡本は、理事を解任してしまいました。

「理事長を解任された?」

しかしまだ私は理事長と院長のポストにはついておりまして」

「これで院長は経営権を失ったわけです。彼らはこの病院を好きにできますね」

「好きにって…」

「この病院を売って現金に換えてしまうことも可能です」

「そんなことになったら先代の先生から受け継いだ病院なのに!」と看護師。

「地域の人にもなくてはならない場所でしょう」

亀山も心配しています。

「僕が警察の人間であることは伏せていますか?」

「ええ、杉下さんは私の個人的な研究対象の入院患者ということになっています。私と看護師の中澤さん以外は誰も知りません。医師には守秘義務がありますから。」

「では僕はあくまで患者としてこの病院に残ります」

「じゃあ外の捜査は僕一人ってことですか?」

亀山の問いに右京は頷きます。

「全て奪う。あとは病院の資産を金に換えるだけです」

ライリーは仲間達に次の指示を出しました。

右京が動けない代わりに、捜査一課の麗音(篠原ゆき子)、伊丹(川原和久)、芹沢(山中崇史)、角田課長(山西惇)も到着。

「体調はいかがですか?警部殿」と伊丹。

「僕は大丈夫です。しかし、この病院は悪性腫瘍に蝕まれています」

「詐欺師による病院乗っ取りですか」

「しかし巧妙だな、詐欺師のプロか」

「僕達がやるべきことは2つ。この病院を取り戻す事、そして過去にまでさかのぼり、詐欺罪で逮捕、立件することです。」

「僕達って、うちらはただのお見舞いに来ただけ」

「んなこと言わないの!警視庁一頼りになるじゃないですか」

亀山が捜査一課をおだてて、協力を頼みました。

「おべんちゃらぬかしてんじゃねぇよ。しかし警部殿、詐欺罪は立件が難しいんじゃ」毒づく、伊丹。

「杉下、お前ここで安楽椅子探偵気取りかよ」と、角田。

「うまいですね」

右京は看護師の中澤と共に、岡村理事を呼び止めました。

「岡村理事」

「なんでしょう」

「患者さんが新理事長にご挨拶したいと」

「それは必要でしょうか?」

「僕達患者は今まで通りの治療が受けられるか不安に思っています。リスボン宣言ご存じですか?」

「リスボン宣言?」

「ご存じない?病院は患者に提言、相談する権利が認められているんですよ」

右京は専門用語を使ってあえて岡村を試したのでした。

その夜、順調に詐欺が進み、「医師の土居」である、小林圭介の身バレがないか確認し合うライリー達。

「土井氏の経歴はホームページに掲載しております。過去の勤務先に問い合わせが入っても問題ないようにしてあります。」

「医師の設定を細かく作り上げたから覚えて」

「医者役は舞台でやったことあるから、大丈夫」と、「土居」こと、小林。

「男は医師の土居健人ではありません。小林圭介です」

翌日、医師の土居として患者たちの前に立つ、小林圭介。

「新理事長の土居健人です」

早速、右京は質問します。

「経歴書によると、土井先生は30代までは大学で病理学の研究をされています。その後急に病院経営に携わるようになったのはどうしてですか?」

「それはやはり医師として病院で患者さん達と向き合いたい気持ちが強くなったからです」

「臨床医としてではなく?」

「臨床医として勤めていた病院が経営に苦しんでいましてね。そこで理事としても働くようになったのがきっかけです」

「ああ、それがこの南日暮里病院でのことですね?あの病院には僕も通院したことがありましてね。ああ最寄り駅の改札をすぐ出たところに、安くて美味しい天丼屋さんがありましてねぇ。先生もご存じですか?」

「あの天丼屋さんですね」

「やはり先生も御存じでしたか。あれ?おかしいな。先生が勤務されていた10年前は店は既に閉店していた筈ですが…」

「先生はそれ以前に非常勤で通われていましたよね」高橋が助け舟を出しました。

「でもそのことは経歴書に書かれていませんねぇ」

「主要な経歴のみを掲載していますので」

「なるほど、うん、うん」

右京は医師の土居こと、小林圭介(管勇穀)の身辺情報を探り入れたのでした。

その後、捜査一課の紅一点、麗音が真実を説明します。

「男の名前は小林圭介。医師の土居健人ではありません」

「で、これが本物の土居先生。この医師は病気でキャリアが途絶えて、ウェブ上に顔写真はありません。」

芹沢が横に割って入って説明しました。

「本当に存在する医師に目を付けて利用したんですね」

「理事としての経歴はライリーが担当した病院ばかりです。照会をかけると在籍した確認はとれるんですが、実際に病院に聞き込みしたところ勤務実態はありませんでした。」

「内部に入り込んだことある病院ならデータの改ざんも可能でしょう」

「手が込んでやがるな、普通に真面目に働けばいいのに」と亀山。

「小林圭介は僕も含め患者さん達に医師であると虚偽の申告をして診療代を受け取ったことになります」

「詐欺成立ですね」

「小林圭介は二課が担当しています」

「まだ泳がせておいたほうがいいですね」

「はい」

「はい、次、伊丹くん、報告宜しく」

亀山が伊丹に報告をバトンタッチしました。

「コンサル会社から病院に振り込まれた一千万円について、金融機関を調べていたようですが、ライリー本人が数回にわたって。会社の口座に現金で入金し、それを病院の口座に振り込んでいます」

「現金ですか…コンサル会社の口座は残高がほとんどない状態。必要な時にライリー本人が入金する。金の流れに例の資産家は介在していないようですね。亀山くん探ってもらえますか?」

「了解。」

その後、亀山が白鳥についての真実を角田に報告しました。

「所有者は白鳥弘二、78歳。役所に聞いたところ本人は音信不通だそうです」

「こういう空き家が増えているんだよ。で、それが犯罪に利用されがちなんだが」

「なんすか」

「なんかこれだけ新品だな」

角田と亀山は倉庫に隠された倉庫には大量の銃を見つけました。

間もなく、亀山は白鳥に居酒屋で再度、接触し、自分が警察であることを明かしました。

「よう、兄ちゃん!」

「白鳥弘二さん?おたくの倉庫から違法なものが発見されましてね」

亀山は白鳥に素性を明かし、ライリー達への関与を認めさせました。

「おっちゃんライリー達との繋がりをあっさり認めましたよ」

「本当の投資者の方は?」

「土地所有者の白鳥弘二は音信不通のまま。事件性があるかはこれから捜査するが、倉庫の銃器には広域指定暴力団、武輝会の関与が濃厚だな」

「つまりライリー達と武輝会には関係があると?」

なんと、ライリー櫻井と広域指定暴力団、武輝会との接点が疑わしいとのこと。

「コンサル会社に有澤って弁護士がいるだろ?有澤は弁護士特権を利用して、警察や拘置所にいる暴力団関係者と接見しまくっていることが確認できた。」

「つまり有澤は暴力団関係者から犯罪に利用できる情報を収集している可能性があると…」

「そういうこと。当然、詐欺で得た金は暴力団にも流れる。課長の出番ですね?」

「うん…、武輝会の資金源は叩き潰す!」

やがて、ライリー達が暴力団と繋がっていることが分かりました。

右京は午後、入院患者の高齢女性、かよに紅茶を。

「一杯どうぞ」

「私はこの病院で生まれて夫を看取ったのもここ。もうすぐ全部曖昧になって死ぬんだろうけど」

「お元気そうに見えますが」

「いや、死ぬ。あんただってそうだろ。なくならないだろうね?」

「大丈夫、お約束します」

その後、ライリー櫻井の仲間達の身辺が、出雲麗音の捜査で明らかになっていきます。

「高橋理沙は元劇団員。経済的に困窮していたところライリーに拾われたようです。役者時代のつてを活かして、なりすまし役のキャスティングや演技指導を担当。」

次に芹沢が話します。

「岡村直人は学生時代に立ち上げたベンチャー企業で、仲間に裏切られ、財産を失いました。そのどん底の状態からライリーの部下に。ウェブ周りの工作は岡村の担当でしょう」

続いて伊丹が弁護士の有澤について語ります。

「有澤一郎は正真正銘の弁護士です。学生時代の成績も良かったらしい。ただネグレクトの被害者で、学費の面倒を見たのは親じゃなかったそうです。援助してくれたあしながおじさんがいたと」

「そのあしながおじさんがライリーですね。」

「彼奴らには彼奴らの絆があるってことですね」

「だからって同情の余地はありません。この病院に対する詐欺の証拠がだいぶ揃ってきました。過去にライリーが関わった乗っ取り事件も全て罪に問いたいところですね」

ライリーはホームレスの男性に夜、混ざり合い、酒を飲んでいました。

その男はかつて、ライリー救った詐欺師でした。

その様子を見る、亀山。

弱者に取り入るのが非常にうまいのです。

右京は病院で、引き続き亀山に捜査を頼みます。

「妙にライリーは弱い人間に優しいみたいです。」

「情に弱いのが君の悪い癖。とはいえそのおかげで貴重な情報が得られました。その最後のピースを探しに行ってきてください」

「行ってきます」

翌日。

「お配りした資料はBYリアリティという外資系の不動産会社のものです。大手なので皆さんも御存じでしょう。」

「非常に好条件で党員を買い取りたいとのことです。

「外資系会社?この病院を売るんですか?」

「経営難は慢性的でクリティカルです。サステナブルとはいえません」

「この病院を売却するんですか?」

「患者さんには他の病院に移ってもらいます。売却すれば理事であるあなたにも大きな金額が入る。苦手な経営から解放されて、研究職に戻ったほうが幸せではないのでしょうか?」

「理事長さんどうも」

「二次会の決議の最中です。患者さんに決議はない」

「申し遅れました。警視庁特命係の杉下右京です」

会議中に右京はライリー櫻井達を追求。

同じ頃、亀山は交番勤務の警察官に、ライリーが子供時代に住んでいた小屋の場所を特定し、現地へ向かいました。

「だいぶ古い記録だから本所を知っている人は少ないです。撤去した記録はないですね」

「杉下さん、弊社はれっきとしたコンサルタント会社です。取引は全て合法的なものですよ?」

「取引の際に虚偽の情報があればそれは詐欺になります。」

「人聞きが悪いことを」

「往生際が悪いこと。土居理事長、本名、小林圭介。詐欺の容疑で逮捕しますね」

間もなく、右京は土居こと、小林にやんわりと声を掛けました。

「はぁ俺はなにも。」

「私はこの人を土居医師だと思ってました。私も騙されたんです!」

土居こと、小林は理沙(橘さり)に罪を擦り付けます。

「貴方達2人の関係は既に調べがついています!」

麗音が威厳ある声で2人を叱りつけました。

「岡村直人さん、病院データを偽造した容疑で逮捕します」

芹沢が岡村に声を掛けました。

「僕は社員として社命に従っただけですよ。何も知りません。」

「話はゆっくり聞かせてもらいますよ」

「有澤弁護士、あなたと暴力団の繋がりについて証言が」

「とんだ茶番集団ですね」

「クライアントの為に文書を作成したに過ぎない、文章ななんら違法性はない」

「あなたと暴力団について証拠が挙がってるんだけど」

「お互い騙した騙されたといって、捜査を攪乱させるつもりなのでしょう。よく教育が行き届いていますね、ライリーさん」

「仕方ないですね。抵抗するつもりはありませんよ」

「素直な態度ですね。そして余裕がある。一般的な詐欺罪は10年以下の懲役が求刑される可能性が高い。刑期を終えた後に十分な資産が隠してあればの余裕ですね」

亀山は交番へ行き、櫻井達の詐欺の手掛かりである山奥の小屋を調査。

「まぁよくこんなところにこんなものを」

亀山は山小屋からライリー達の裏金の大金を見つけました。

「失礼しました。あなたのスーツ、この前と着ていたのと違いますね」

「細かい事が気になるかただ」

「あなたのスーツ、映画嘘つき野郎のスーツですね。僕の相棒が偶然同じスーツを着る詐欺師の情報を見つけたのですよ。」

「こう見えて昔は俺も羽振りが良かったんだぜ。」

「ああ確かにね。ただもんじゃないオーラが出ていますよ」

「俺の名前はスマイリー。宇宙考古学の博士さ。」

「かつてスマイリー博士と呼ばれたロマンス詐欺師で、本名は田中誠。博士でもなんでもないただの日本人です。全盛期にはあなたと同じスーツを着て嘘に嘘を重ねた。しかし結局は刑務所に入り、出所後は刑務所に入り、軽犯罪を重ねて現在は住所不定。人を騙し頭がいいと思っていた詐欺師のなれの果てとでもいいましょうか。そういう犯罪者の過去の自慢話をを話したがる。スマイリー博士も過去の武勇伝を語っていました。その中に興味深いエピソードを見つけましてね。郷里の温泉街である少年と出会いまして。」

かつて、詐欺師の「スマイリー博士」こと、田中誠に助けられた少年が、ライリー櫻井でした。

店主は食い逃げする彼を折檻していました。

「これを貸してあげよう」

「僕には返せない」

スマイリーはライリー少年に、20万円を貸しました。

「君は返せない。君が別人になったとしたら?」

スマイリー博士は親もなく家もない少年を詐欺師に育て上げました。

「それが私だと?何の証拠もないじゃないですか」

「僕としてはあなたの過去に興味はありません。僕が興味を持ったのは山奥にある少年の住処です。社員の皆さんは病院乗っ取り詐欺が成功した後、バカンスに行っていました。皆さんは渡航履歴も確認済みです。しかし、ライリーさんあなただけは同行しなかった。履歴の残る事を警戒していたのでしょう。」

「都内で仕事を」

「スマイリー博士と話していたところ関係性があることが分かりました。偶々、僕の相棒が大金を拾ったそうです。あなたのお金であれば持ち主として名乗り出ればいい。その場合、警察が差し止めして、出所について捜査されることになりますが。山奥とはいえ、セキュリティの全くない場所に大金を隠したのは?」

「どうしてですか」

「スマイリー博士に似た方を同郷で確認したところ、あなたによく似た紳士の情報が得られました。」

「それが詐欺となんの関係があるんです?」

「あなたは見捨てられた存在でした。だからこそ少年時代の場所に大金を隠した。誰も見向きがしなかったから。自己陶酔と破壊衝動にかられたある意味、ロマンチックな行為といえるでしょう。しかしそれは頭の良さとは真逆の資質です。そもそも本当に頭のいい人間は詐欺師にはなりません。」

「所有者がいないので拾得物扱いになりますね」

亀山は、交番の警察官に、櫻井の隠し金を説明しました。

「皆さん、ハニーな時間は終わり、終幕です」

ライリーは全てを認め、伊丹達に逮捕されていきました。

「おかげ様で病院を取り戻せました。」

「杉下さんがいなかったらどうなっていたか」

「病院の経営に関しては、かよさんから提案があるようです」

「先生、私の資産をこの病院に譲ります。他の地主たちにも声をかけている。ちゃんとした専門家をつけて病院を守るんだよ?」

その後、寺田院長の病院を、入院患者のかよが資金援助してくれることになりました。

「そういえば右京さんの脳波どうなったでしょうね」

「異常な脳波が杉下さんにとっては正常なことが確認できました。」

そして拘置所にいる、ライリーは右京と亀山に頼みました。

「スマイリーのおっちゃんの様子を見に行ってほしい。金を渡そうとしても受け寅人ですよ。」

「それがですね、田中誠さんは先日、路上で亡くなられたそうです」

「冬を越せなかったか。わざわざ来てもらったんだ。私の話を聞いてもらえませんか?捜査二課の刑事はあなたに比べると質問がおおざっぱなんですよ。どうせなら最後まで語りたい、素晴らしき嘘つき野郎の話をね」

「構いませんよ。どんな些細な罪も見逃さないように僕達が取り調べましょう」

右京と亀山は、ライリー櫻井の取り調べを担当しました。

相棒23 12話感想・みどころ

孤独で、愛情と飢餓を感じる少年が詐欺師の道に走り、自分自身を確立してしまいました。

ライリー櫻井の寂しさや、不器用でどうしようもない生き方が切なかったですね。

初めて自分のことを細かく聞いてくれる刑事の右京に出会い、彼にとっては、刺激を受けたのでしょう。

ライリーについていった面々も人生で躓き、居場所を失った者ばかりです。

彼が作った狭いコミュニティは、社会からはみ出したものを詐欺師として集結させることによって、彼ら独自の家族意識が芽生えていると思いました。

詐欺は勿論、犯罪ですが、ライリー一派たちの行動の背景には、誰からも必要とされないさみしさを感じました。

病院長の寺田がお人好し過ぎて少し笑ってしまいました。

最後は有能な地主の友人を持つ、入院患者、かよのおかげで病院が維持できましたね。

右京も脳波に異常があることが普通って…。

何はともあれ、右京が重病でないことに安堵するとともに、自分にしつこいくらい向き合う刑事と出会ったライリー櫻井の更生を願いたい12話でした。

 

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